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第十七章 アビナダイの殉教。火あぶりされている間に、アビナダイ自分の殉教に対する応報のあることを予言する。アルマの改宗。 さて、アビナダイがこのように言ってしまうと、ノア王は祭司たちにかれを捕えて殺させよと命じた。
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ところが祭司らの中にニーファイの子孫でアルマと言う年若い男があった。かれはアビナダイが祭司らに向って証をした罪悪が本当の事であるのを知ってその言葉を信じたから王に向って、アビナダイを怒らずにかれを放って安らかに出て行かせてくれと乞いねがった。
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しかし、王はいよいよ怒ってその場からアルマを追い出させ、その上かれを殺すために僕たちにあとを追わせた。
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ところが、アルマはこの追手から逃げて姿を隠したから僕たちはその行方を失った。そしてアルマはしばらくの間隠れていたが、その間にアビナダイが言った言葉をのこらず書き誌した。
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王はその番兵にアビナダイをかこんで捕えさせたので、番兵はアビナダイをしばって牢屋の中に入れた。
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それから三日たって王はその祭司たちと相談をした後、またアビナダイを王の前に引き出させてかれに言った。
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「アビナダイ。汝の罪状すでに明らかであるから死刑に処する。
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汝は神が親しく世の人の所に降臨すると言ったから、もしわれとわが民とについて言った不吉なことをのこらずとり消さないならば、汝はかならず殺されるのである。」
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アビナダイはそこで王に答えて言った「王に申し上げる。私がこの民について王に申し上げたことは真実であるから、私は決して取り消さない。私はその言葉が確かであることを王に知らせようとして、甘んじて王の手に落ちたのである。
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私は死に至るまで堪え忍び、決して私の言ったことを取り消さない。私の言葉は王を責める証となるであろう。王がもし私を殺すならば、これは罪のない者の血を流すのであるから、また終りの日になって王を責める証となるであろう」と。
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ここに於て、ノア王はアビナダイの言葉を恐れ、神の罰を受けるか知れぬと思ってまさにアビナダイを放免しようとした。
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ところが、祭司たちは声をあげてアビナダイを訴え「こやつは王をののしった」と言ったので、王は再びアビナダイを怒って死刑を言いわたした。
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そこで、祭司らはアビナダイを捕えてしばり、薪を燃やしてその肌を焼き苦しめ、火あぶりにして殺した。
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さて、炎があがってアビナダイを焼き始めるとき、アビナダイはかれらに叫んで言った。
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「見よ、今汝らが私にしたように、汝らの子孫もまた多くの人に火あぶりの苦しみを与えるにちがいない。この火あぶりに逢う人々はその民である主の与えたもう救いを信ずるからである。
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また汝らは罪悪のためもろもろの病にかかり、
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四面から打たれ、野性の羊が猛獣に追われるようにあちこちに散り乱れるであろう。
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その日に汝らは狩りとられて敵の手に落ち、今わが苦しむ通り火あぶりの苦しみを受けるにちがいない。
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神はこのようにその民を亡ぼす者にあだを報いたもう。神よ、わが霊を受けたまえ」と。
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このように言ってしまうと、アビナダイは火あぶりにされて死んだ。アビナダイが殺されたのは、神の命令をいやと言わなかったからであって、この殉教によってかれは自分の言葉が真理であることを証印したのである。
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