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第61章 国を愛するペホーランの返事。ペホーラン、自身も自由党も罪なしとする。ニーファイ人の国は亡びようとしている。統治者、謀叛を止めるために軍隊の助けを求める。 モロナイは統治者にあてて手紙を出してから、すぐに統治者ペホーランから手紙を受け取った。その手紙の中には次のように書いてあった。
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「われ、すなわちこの国の民の統治者ペホーランは軍の司令長官であるモロナイにこの手紙を送る。モロナイよ、明らかに言うとわれは汝らが甚だ困難をしていることを喜ばず、むしろ心にこれを悲しんでいる。
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しかし、汝らが困難しているのを見て喜んでいる人々がある。これらの人々はわれにもまた自由党に属するわが民にも叛いて、その数は非常に多くなっている。
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わが裁判職を奪い取ろうとした者たちこそ、すなわち汝が訴えるあの大きな悪事を起した者たちである。かれらはへつらいに長じていて多くの人の心をまどわしたから、将来われらの中に烈しい苦難を生ずるであろう。そればかりでなく、この連中は納めなくてはならない食糧をまだ納めず、わが自由党の人々の勇気をくじいてこの人々を汝の所へ行かせないようにしている。
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見よ、かれらがわれを追い出したから、われは集められるだけの味方を集めてギデオンの地へ逃げた。
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われはすでに国のこの地方へふれを廻したから、民はその国と自由とを守り、また不法にわれらを扱う者を撃つために日々武器をとってこちらへ集っている。
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このようにわれらに味方をする者が多いから、われらに逆らった者たちも今は無視されて、われらを恐れ思い切って戦う勇気がない。
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しかし、かれらはすでにゼラヘムラ市を占領し、また自分らを治める王を立てている。その王はレーマン人の王に手紙を送って同盟をし、その同盟の中でゼラヘムラ市を固める誓約を立てたが、謀叛党の王はこのようにゼラヘムラ市を固めることによって、レーマン人が国のほかの部分もみな占領ができると思い、またこの国の民がレーマン人に負けたら自分がこの国の王になれると考えている。
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汝は今手紙を以てわれを責めているが、それはどうでもよい。われはこれを怒ることなく、かえって汝の心が偉大であることを喜んでいる。われペホーランはこの国の民の権利と自由とを護ることができるよう、裁判職を保つ権力以外に何の権力も求めない。われ自身は、神がわれらを自由になしたもうたその自由の道によって堅く立っている。
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われらは血を流しても断然悪事に反対をする。しかし、レーマン人が自国からそとへ出てこなければこれを殺さない。
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またわれと同じ国民が謀叛を起し、武器をとってわれらに反抗しなければこれを殺さない。
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またもし神の正義が要求するか、または神の命令であるならば、われらは奴隷のくびきでも甘んじて受けよう。
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しかし神は敵に従えとは命じたまわず、われに頼れそうすれば救ってやると言いたもう。
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それであるから、わが愛する兄弟モロナイよ。われらは悪を防ごうではないか。われらはわれらの自由を保ちわが教会の大きな特権及びわが贖い主と神との道を楽しむように、言葉の力で防ぐことのできない謀叛、紛争など一切の悪事は剣で以て防ごうではないか。
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それであるから、汝の兵を少しばかりひきつれて早く自分の所へ来てくれ。そして残りの兵をリーハイとテアンクムの指揮にまかせ、この二人に権力を与えて、神の「みたま」すなわちかれらに宿る自由の「みたま」の指図に従ってその地方の戦を指揮することを任せよ。
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その地にのこっている軍のために、われは僅ながら食糧を送っておいたから、汝がここへ来るまではかれらは飢えて死ぬことはあるまい。
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ここへ軍を進める道すがら集めることのできるだけの兵を集めてきてくれ。われらはわれらの信仰によって、またわれらの受けた神の力によって速に行ってあの謀叛人らを攻めよう。
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そして、リーハイとテアンクムに送る食糧を手に入れるためにゼラヘムラ市を占領しよう。まことに、われらは主の御力によって出て行って謀叛人を攻め、そしてこの大きな悪事を止めよう。
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さて、モロナイよ。われは同じ国の民と戦うために進むことがはたして正しいかどうか、またどうしたらよいかをきめるのに苦しんでいたから、今汝の手紙を手にして嬉しく思う。
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主は、民がもし悔い改めないならば、行ってこれを征伐せよと汝に言いたもうたと、汝は言っている。
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それで、必ずリーハイとテアンクムに主によって勇気と力とを受けさせよ。また神は二人を救いたまい、また神から受けた自由を堅く守って動かないすべての者を救いたもうから決して恐れるなと言え。これで愛する兄弟モロナイへ送る手紙を結ぶ」と。
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