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第十三章 予言者アビナダイ、神の力に守られて祭司らの攻撃に堪え律法と福音とを引いて語る。 さてノア王はアビナダイの言葉を聞いて祭司らに「こいつを追い払って殺してしまえ。こいつは気違いだ、われらと何のかかわりがあるか」と言った。
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そこで祭司らが立ってアビナダイを捕えようとしたが、アビナダイは祭司らを防いで言った。
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「私にさわるな。もし私に手をかけるならば神が必ずあなたらをうち破りたもうであろう。私は主が私をつかわして伝えさせようと思いたもうた使命をまだ果していない。またあなたらが私に説明をせよと言ったこともまだ説明していない。それで、神は私が亡びるのを許したまわないのである。
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私は神から受けた命令を行わなくてはならない。しかし、私があなたらに本当のことを言ったので、あなたらは私に腹を立て、また私が神の言葉を告げたのであなたらは私を気違いだと思った」と。
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さてアビナダイがこう言った後にもノア王の民は思い切ってアビナダイを捕えなかった。それは主の「みたま」がアビナダイに満ちて、ちょうどモーセがシナイの山で主と直接話をした時のようにアビナダイの顔がまばゆく輝いていたからである。
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アビナダイは神から受けた権能と威勢とをもって語りつづけた。
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「あなたらは私を殺す力がないことを自分で知っている。それで私は自分の使命を今伝えてしまおう。私は、私があなたらの罪悪について本当のことを言うのであなたらの心が切られるように痛むことを知り、
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また私の言葉があなたらの胸に怪しみと驚きと怒りとを満たすことを知っている。
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しかし、私は自分の使命を果そう。それから私が救われるならば自分の行末については何の心がかりもないのである。
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私はただこれからあなたらが私に対してすることが、将来起ることを示すものとなり手本となるということを言っておく。
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私は神の戒めがあなたらの心に記されていないことを認め、あなたらが一生の大半を悪事を習って教えるに費したことを知っているから、今あなたらに神の戒めの残りを読み聞かせてあげる。
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あなたらは私が前に言ったことをおぼえているだろう。すなわち『己がため何の偶像をも造るべからず。上は天にあり下は地にあり地の下は水の中にある何者にてもその形に象りて偶像を造るべからず』と。
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私はまたそのつづきを読んで聞かそう『汝またその前にひれ伏すべからず、これに仕うべからず。何となれば主にして汝の神なるわれはねたむ神にして、われを憎む者の三、四代後の子孫にまでその父祖の罪を報い、
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われを愛してわが命令を守る者には幾千万人までも恵みを施すべければなり。
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汝は徒らに汝の神なる主の名を口にすべからず。主は徒らにその名を口にする者を罪なしとせざればなり。
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安息日を大切に憶えて聖日とせよ。
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六日の間働きて、為すべき一切の業をなすべし。
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七日目すなわち汝の神なる主の安息日には何の業をもなすべからず。汝も汝の息子、娘、僕、婢、家畜そのほか汝の門内にある外来人も皆然り。
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そは、主六日の間に天地と海とその中なる万物とを造り、安息日を祝してこれを神聖としたまいたればなり。
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汝の神なる主が汝にたまいし地に永く生きながらえ得んがため、汝の父母を敬え。
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汝殺すべからず。
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汝姦淫すべからず。汝盗むべからず。
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汝その隣人につき偽りの証を立つべからず。
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汝その隣人の家、妻、僕、婢、牛、ろばそのほか隣人のいかなる物をも貪るべからず』」と。
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アビナダイはこのように読み終ってまた祭司らに言った「あなたらは、この民にこれらの命令をみなよく守りこれらの事をみなよく行うように教えたか。
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いやいや、あなたらは教えなかった。もしあなたらがこれを教えたならば、主は私をつかわしてこの民について不吉な予言をさせたまわなかったであろう。
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さて、あなたらはモーセの律法によって救われると言った。今私は言う。あなたらはまだモーセの律法を守る必要がある。しかし、よく言っておく、将来もはやモーセの律法を守る必要がない時がくる。
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さらに、律法だけで救われるのではなくて、もしも神御自身がその民の罪悪を贖うためになしたもう身代りの贖罪がないならば、たとえモーセの律法があっても世の人は亡びるほかはないのである。
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イスラエルの子孫はかたくなな民であって罪を犯すことが早く、その主なる神を思うのがおそかったので、とくいきびしい律法をかれらに与える必要があった。
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それであるから、かれらには常平生神と神の御前で行わねばならぬ務めとをおぼえさせるため、日々堅く守らねばならぬ儀式典礼の多い律法が与えられた。
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しかし、ごらん、これらの式はみな将来起ることに応じてあらかじめこれを示すものであった。
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さて、イスラエル人はこの律法をよく理解していたか。いやいや、かれらはその心がかたくなであったから律法を理解しない者も居た。なぜならば、神が与えたもう贖いによらなければだれも救われることができないのを悟らなかったからである。
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ごらん、モーセはメシヤが降臨したもうことを、また神がその民を贖いたもうことをイスラエル人に予言したではないか。世界が始まってからこのかたの予言者たちも皆そうしたではないか。この予言者たちは皆多少なりともこれらの事について話したではないか。
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この予言者たちは、神が親しく世の人々の中に降臨して人の形を受け、大きな能力をもって世界の面を歩きたもうことと、
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神が死者の復活を来し、また自ら悩まされ責められたもうことを告げたではないか。」
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