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第二十一章 アビナダイの予言さらに成就する。奴隷の境涯にあるニーファイ人、非常な苦しみを受ける。主がニーファイ人の敵の心を柔げたもう。かの二十四枚の版に就いてさらに説く。 リムハイはその民といっしょにニーファイ市に帰り、また平和にその地に住むこととなった。
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ところがそれから長らくたって、レーマン人がまたニーファイ人に対して怒り出しその国境に侵入した。
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しかし、王がリムハイとした誓いがあるので思い切ってニーファイ人を殺しはしなかったが、たびたびその顔を打ち、権威を振ってその背に重荷を負わせ、物が言えぬろばのように追い使うようになった。
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これはみな主の御言葉を成就させるために起ったのである。
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さてニーファイ人は非常に艱難をしたが、レーマン人が四方から取り囲んでいたので、レーマン人の手からのがれることができなかった。
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よって人民はその艱難に堪えず、王につぶやいてレーマン人と戦わせてくれとたのみ、苦情をとなえてひどく王をなやましたので、王はついにその望み通りにせよと許した。
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そこで人民は再び集まってよろいを着け、レーマン人を国から追い払おうと出陣をした。
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ところがレーマン人が勝ってリムハイの民を追い返し多くの者を殺した。
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ここに於てリムハイの民の中に大きな歎きと悲しみとがあり、やもめはその夫の亡くなったのを歎き、息子や娘はその父の亡くなったのを歎き、兄は弟の、弟は兄の亡くなったのを歎いた。
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ところで、今や国中にあるやもめの数が非常に多く、襲うてきたレーマン人をひどく恐れて毎日毎日泣き叫んだ。
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かれらがたえず泣き悲しんでいるために、リムハイの民の中でのこっている者たちが奮い起ってレーマン人のことを怒り、再び戦いに出たけれどもまた追い返されて多くの損害を受けた。
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かれらは三度までも出て戦ったが同じように損害を受けたので、殺されなかった者はまたニーファイ市に帰り、
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甚だしい屈辱を受けて奴隷のくびきを受け、敵の心のままに打たれたり、ここかしこに追われたり、重荷を負って苦しめられるに任せた。
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かれらは自ら低くへりくだって切に神に祈り、終日その難儀な境涯から救いたもうように祈った。
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主はかれらが犯した罪悪があるから、かれらの切な願いを容易には聞きとどけたまわなかったが、後にはこれを聞き入れてようやくレーマン人の心を和げたもうたので、レーマン人はニーファイ人の苦労を軽くした。しかしこれを奴隷の境涯から救うことは主のみこころにかなわなかった。
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さて、その後ニーファイ人はその土地で次第に栄えて豊かに穀物を作り、家畜の群を飼ったので、飢えに苦しめられることはなかった。
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しかし女の数が男よりも多かったので、リムハイ王はやもめたちとその子らが飢死をしないよう、男はみな施しをしてこれらを助けるように命じた。これはさきに殺された者が多かったからそうしたのである。
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リムハイ王の民はなるべく居る所をまとめて一団になり、その穀物と家畜とを安全に守った。
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また王は自身が何らかの方法でレーマン人の手に落ちることを恐れ、護衛の兵なしには市の城壁の外へ安心して出ようとはしなかった。
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また王は荒野へ逃げこんでレーマン人の娘たちをさらい、ニーファイ人にこのような大きな災を蒙らせた祭司たちを何とかして捕えるため自分の民にまわりの土地を見張らせた。
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あの祭司たちは、また夜にニーファイの地へしのびこみ、民の持っている穀類や多くの貴重品を取って行ったから、民はかれらを捕えて罰してやりたいと思って待ちかまえていた。
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これから後は、アンモンとその兄弟が国へ来るまで、レーマン人とリムハイの民の間に二度と争いが起ることはなかった。
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リムハイ王はさきにその護衛兵といっしょに城門のそとに居たとき、アンモンとその兄弟らを見てこれをノアの祭司たちだと思ったから、かれらを捕えさせしばって牢屋へ入れたのであった。かれらがもしも本当にノアの祭司であったなら王はかならずこれを殺させたであろう。
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ところが王はそれが祭司らでなくて、ゼラヘムラの地からきた兄弟たちであることを知って非常に喜んだ。
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リムハイ王はゼラヘムラを見つけるために、アンモンが来る前に少しばかりの人を派遣したことがあったが、これらの者はゼラヘムラを見つけることができずに荒野の中をさまよって歩いた。
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それでもかれらは前に或る民が住んでいたが今は白骨が一ぱいに散らばっている所、すなわち前に或る民が住んでいたがその後荒された地を見つけて、これがゼラヘムラの地であると思ってニーファイの地へ帰ってきた。そしてかれらが国の境へ着いたのはアンモンが来る少し前のことであった。
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かれらは国へ帰るときに、かれらが見つけた骨をのこした民の歴史を誌した記録を持って帰ったが、それは金版の上に刻んであった。
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さてリムハイ王は、モーサヤが神から受けた賜物を持っていて、これを使ってこのような版に刻んだ文字を訳することができるとアンモンから聞いて知り、また一方ならず喜び、アンモンもまた共に喜んだ。
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しかしアンモンについてきた兄弟たちは、同じ兄弟たちであるリムハイの民が多く殺されたのを悲しみ、
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またノア王とその祭司たちが神に対して多くの罪悪を民に行わせたのを悲しみ、アビナダイの死んだことを悲しみ、神の能力と権威とアビナダイが伝えた言葉を信ずる信仰とによって神の教会を立てたアルマとアルマに従った人たちが立ち去ったことを悲しんだが、
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その行方を知らなかったから、かれらが立ち去ったことを非常に歎き悲しんだ。アンモンとアンモンについて来た兄弟たちは、神に仕えてその命令を守ることをすでに誓約した者たちであるから、アルマの居る所を知ったならば喜んで必ずその仲間に加わったことであろう。
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さてアンモンがこの国へきてから、リムハイ王は神に仕えてその命令を守る誓約を神と結び、民の中にもこの誓約を結ぶ者が多かった。
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リムハイ王と多くの民たちはバプテスマを受けたいと望んだけれども、その国中に神から権能を授かって今これを持っている者が一人もなかったので、アンモンは自分はバプテスマを授ける資格のないしもべであると考えて、バプテスマの儀式を施すことをことわった。
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従って、かれらはその時教会を自分たちで立てることをせずに、主の「みたま」を待つことにした。かれらは荒野へ難を避けたアルマとその兄弟たちのようになりたいと思い、
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また誠心から喜んで神に仕える証拠としてバプテスマを受けたいとひたすら望んだけれども、この望みのかなう時はおそくなった。そのバプテスマの記事はあとからこの版にのせる。
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さて、アンモンとアンモンについてきた人々とリムハイ王とその民とは、もっぱらレーマン人の支配と奴隷の境涯から脱するために心をつくして考えた。
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