[真理子日曜学校 - 聖書の言語入門(フレーム表示) ]
【韓国語文語コース】
現代語の文末表現
- 文末表現
今までの「名詞につく助詞」だの「接続する助詞」だのは、基本的に口語も文語も変わりありません。もっとも「接続する助詞」の中には、韓国語をけっこう勉強した人でも「こんなの初めて見た」なんていうのがあったかもしれません。
しかし、そんなものは序の口です。ここで取り上げる文末表現こそ、口語と文語で大きく違うところです。改訳ハングルまたは改訳改訂聖書を読んでいると、「文の途中まではスラスラ分かるのに、文末だけさっぱりわからない」という悩みをかかえることでしょう。そのくらい文末表現は違うのです。
しかし韓国語の場合はやはり現代語の表現が基本であり、これをおさえずにいきなり文語の表現をやってしまうと混乱します。急がば回れ、ぐっとこらえて、まずは現代語の文末表現をおさえておきましょう。
以下の表現は基本的に動詞や形容詞の語幹に接続しますが、- ○○/××……語幹が母音で終わるものには○○、子音で終わるものには××をつける
- (으)××……語幹が母音で終わるものには××、子音で終わるものには으××をつける
- (아/어)××……語幹末字の母音が아・오系ならば아××、そうでなければ어××をつける
ということです。また、「補助語幹」で述べたような補助語幹がついた場合にふるまいが異なるようであれば注記します。
- 上称
平叙文 | ㅂ니다/습니다 |
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疑問文 | ㅂ니까/습니까 |
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命令文 | (으)십시오 |
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勧誘文 | (으)십시다 |
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韓国語の敬語は日本語なみに複雑ですが、一番丁寧なこの表現を言っておけばとりあえずケンカになることはないというので、今では入門者がまっ先に覚えさせられる表現です。いや、韓国人だってそう。テレビラジオのニュースの言葉、デパート・駅・空港の館内放送など、誰が聞いているかわからない状況でとりあえず一番丁寧な言葉を使っておけというので使われます。ですから日本語の「です・ます」調だと説明されることが多いし、現代ではそうなんでしょうけど、もともとはかなりバカっ丁寧な表現です。日本語を習いたての韓国人の中に、なんでもかんでも「~でごじゃいます」(韓国語はザがないのでこういう発音になりがち)とつける人がいますが、あれはㅂ니다=「ございます」って覚えてるんです。なんでもかんでも「ございます」っていわれると日本人としては「ちょっと丁寧すぎるわ」って思うでしょう? 実は韓国語でも本来はそうなんです。今では濫用されてますけど。
補助語幹がつくかどうかですけど、過去の았/었はOK。もっとも命令と勧誘は意味的に併用不可能です(命令も勧誘もこれからのことで、過去じゃありませんからね)。尊敬の시は、命令の십시오と勧誘の십시다にはすでに含まれているので不可、平叙のㅂ니다と疑問のㅂ니까とは併用可です。美化の옵はすでに含まれているので使用不可。どこに入ってるですって? 実はこれら上称表現すべてに入っているㅂって、本来옵なんです。
- 下称
| 動詞 | 形容詞 | 指定詞 |
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平叙文 | ㄴ다/는다 | 다 | 다 |
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平叙文引用形 | ㄴ다고/는다고 | 다고 | 라고 |
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疑問文 | 느냐 | 냐 | 냐 |
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命令文 | 아라/어라 | |
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勧誘文 | 자 | |
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一番シンプルな形で、新聞記事や論文はこの文体ですし、他の表現中でも~고(この場合日本語の「~と」にあたる)や~는(~という)でくくられる引用文内ではこの形が普通です。引用文内では指定詞の平叙文のみ다が라にかわります。
動詞か形容詞(이다と아니다を含む)かでふるまいが多少異なるのが特徴です。特に平叙文では上記の違いは絶対的です。口語では動詞の疑問文でも느냐でなく냐だけのときがあります。
過去の補助語幹았/었、推量の補助語幹겠がつくと、動詞のときだけは形容詞的変化になります。つまり았다/었다/겠다になるということです。
尊敬の補助語幹시はすべて併用可。美化補助語幹は옵は使用不可。
- 等称
| 動詞 | 形容詞 |
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平叙文 | 네 | 네 |
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疑問文 | 는가 | (으)ㄴ가 |
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命令文 | 게 | |
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勧誘文 | 세 | |
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大人が等しい間柄あるいは目下の成人に用いるのがこれですが、「~だね」「~だなあ」「~かい?」「~しようよ」のように、何かしら詠嘆的だったりくだけたりするニュアンスがこもるので、まるっきり敬語だの違いというわけではありません。
- 中称
| 動詞 | 形容詞・指定詞 |
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平叙文 | 오/소(으오) | 오/소(으오) |
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疑問文 | 오/소(으오) | 오/소(으오) |
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命令文 | (으)시오 | |
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勧誘文 | (으)ㅂ시다 | |
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下称が書き言葉の基本形だとすれば、この中称は話し言葉の基本形とでも言うべきものです。
でも命令・勧誘はともかくとして平叙・疑問오/소なんて、いまどきの韓国語初心者は、いや、かなり韓国語を勉強した人でも、「こんなの見たことも聞いたこともないぞ」って言うかもしれません。でも往年の名参考書(一応現役)『朝鮮語四週間』(大学書林)では最初にこの形を勉強するのです。古めかしい言い方ですが北朝鮮ではいまだに現役らしく、北の映画で老人のセリフはたいていこれです。「ありがとう」は今の南の言葉じゃ고마워(요)ですけど、北じゃ고맙소がまだまだ現役みたいです。
- パンマル
韓国語で「半分の言葉」という意味。連用形そのもの、つまり아/어で文を終える表現です。一番シンプルな形で、これだけで平叙・疑問・命令・勧誘のすべてを表現することができます。どこの言語でも一番シンプルな形が一番ぞんざいな意味になることが多いものですが、韓国語のパンマルもまったくそのとおり。非常にドライな言い方で、不用意にこれを使うとケンカになりますが、逆に親しい間柄ではこれを用いないとよそよそしく水臭いととられてしまいます。
連用形に지をつけた形もパンマルの一種で、この場合には一種の疑念を示したり、断定的でなく婉曲に言ったりというニュアンスが加わります。
- 略体上称
これは伝統的な韓国語にはなく、独立後に南で発達した言葉なのですが、今の韓国ではひょっとしたら一番使われる表現かもしれません。ですから韓国語初心者も上称についで勉強させられる言葉です。
上称ほどバカっ丁寧ではないものの、一応丁寧な言葉とされているもので、話し言葉(または話し言葉的な文章)で用い、特に女性がよく用います。が、別に女言葉というわけではないので男性が用いてもヘンではありません。
形としては「パンマル+요」です。つまり一番ドライで「使用注意」的な危険な表現が、ただ요をつけただけで丁寧な言葉に大変身してしまうわけですね。それだけに、現代風でお手軽な丁寧表現として広まったのでしょう。
北では「南の下品な言葉」という言い方をすることがあります。もちろんイデオロギー的な立場でそう言うのですが、南で発達した言葉であること、요をつけなければただのパンマルですから、下品な言葉という非難にも一理はあります。まあそれでも北でも日常会話では使ってるみたいですけどね。