[真理子日曜学校 - 聖書の言語入門(フレーム表示) ]
【16世紀ドイツ語コース】

名詞


  1. 大文字で始める
     名詞は大文字で書き始めます。固有名詞はもちろん一般名詞も大文字で書き始めます。


  2. 3つの性
     名詞は文法的に男性(m)、中性(n)、女性(f)のいずれかに分類されます。


  3. 2つの数
     数には単数(sg)、複数(pl)があり、数えられるもので2個以上のものは複数形を用います。


  4. 4つの格
     格は1格(N.、主格、~が)、2格(G.、属格、~の)、3格(D.、与格、~に)、4格(A.、対格、~を)の4つがあります。ドイツ語の文法書では圧倒的に番号で呼ぶことが多いので以下も番号で呼びます。


  5. 複数形の作り方
     
    作り方ウムラウト
    同形なしOnkel(m.おじ)→Onkel
    ありBruder(m.兄弟)→Brüder
    mおよびn: 語尾-er、-em、-en、-er、-chen、-leinをとるもの
    -eなしHund(m.犬)→Hunde
    ありHand(f.手)→Hände
    m: 1音節語(Be-、Ver-、Ge-などの前綴りがつく場合も)。また-ig、-ich、-ing、-end、-at、-is、-ichtで終わる語。
    n: 多音節語
    f: 1音節語
    -erなしKind(n.子ども)→Kinder
    ありMann(m.男)→Männer
    n: 1音節語
    -(e)nなしStudent(m.学生)→Studenten
    Auge(n.目)→Augen
    m: 語尾-eをとるもの(弱変化名詞)、最終音節にアクセントのある外来語
     f: 多音節語
    -sなしAuto(n.車)→Autos
    英語、フランス語からの外来語
    このように、語尾の形で5種類あり、さらに上3つは主母音をウムラウトさせるものとさせないものとがあるので都合8種類です。どれがどうという法則は上に書いたとおりですが、例外もちょこちょこあり(たとえば上の表で、-erとなるのは中性名詞しかないような書き方をしているのに、例語に男性名詞のMannがあるとか)、ウムラウトするかどうかの法則は特にありませんので、結局はいちいち覚える方のが確実です。
     ただし、複数形が作れてしまえば、元が男・女・中性のいずれかにかかわりなく、すべて同型の変化をします。名詞の複数形は「単数形とは別の、性の区別のない語」という感覚です。


  6. 名詞の格変化、一番ラクな覚え方
     名詞の格変化は、このようにまとめるのがたぶん一番簡単でしょう。
    1. 複数は性の区別ナシ(ドイツ語の大原則)……ですから以下、男性、女性、中性といったらすべて単数のみをいうこととします
    2. 男性を除いて1格=4格(ドイツ語の大原則)
    3. 男性、中性は2格が-(e)s、3格が-(e)
       
      1格Onkel
      2格Onkels
      3格Onkele
      4格Onkel

       ※-s-esかは口調の問題で、どちらでもいい場合もあります。概して-s、-z、-xで終わるものは-es-e、-m、-n、-l、-rで終わるものは-sですが、辞書で確認しましょう。
       ※3格の-eは2格が-sでなく-esとなる語につきます。なお、現代語では不要なので現代語中心の文法書や辞書には書いていない場合があります。ルター聖書では必須のようなのでここに記しました。
    4. 女性は無変化
       
      1格Hand
      2格Hand
      3格Hand
      4格Hand
    5. 一部の男性は2~4格が-(e)n……弱変化といいます
       
      1格StudentJunge
      2格StudentenJungen
      3格StudentenJungen
      4格StudentenJungen
    6. 複数は3格のみ-n(最初から-nがついていれば無変化)
       
      1格HundeStudenten
      2格HundeStudenten
      3格HundenStudenten
      4格HundeStudenten


  7. 例外的な名詞
     上記の法則に矛盾するのはName(m. 名前)とHerz(n. 心臓)、そしてAuto(n. 車)の複数形Autos(複数形が-sとなるものはみな同様)で、以下のようになります。
     
    1格NameHerzAutos
    2格NamensHerzensAutos
    3格NamenHerzenAutos
    4格NamenHerzAutos


  8. 辞書での変化の調べ方
     4格×2(単数複数)の8形を載せるのはわずらわしいので、たいていの辞書では見出し語のあとに、単数2格と複数1格の形を載せています。そこがわかればあとはすべて導けるからです。単数2格が-sまたは-esとあれば、単数は2格だけがそういう語尾をつけることがわかりますし、単数2格が-nまたは-enとあれば弱変化なので、2~4格すべてそういう語尾をつけることがわかります。複数は3格のみ-nなので、複数形の作り方さえわかれば自動的にできます。Name、Herz、Autoのような例外的なものは、親切な辞書ではすべて記していますし、不親切な辞書でも例外的な部分のみ記しています。