[真理子日曜学校 - 聖書の言語入門(フレーム表示) ]
【韓国語文語コース】

補助語幹


  1. 補助語幹とは?
     韓国語は、名詞や用言(動詞・形容詞)にさまざまな助詞がつくことで、語と語の関係を示していきます。名詞のほうは辞書に載っている基本形に助詞を接続させるだけですむのですが、用言のほうは、基本形から다を除いた語幹に助詞を接続させます。このことはすでに「動詞・形容詞の変化」で説明しました。
     が、実はさらにもう一段階あるのです。用言の語幹と助詞の間には、このページで説明する「補助語幹」と呼ぶものが割り込む可能性があるのです。つまり、
    用言の活用=語幹+補助語幹+助詞
    という形になるのです。
     補助語幹は全部で4つ、過去を表す았/었、推量を表す겠、尊敬を表す시、美化を表す옵です。
     なお、助詞をまだ説明していませんので、以下の実例中にはまだ説明していない助詞がうじゃうじゃと出てきます。「それなら先に助詞をやればいいじゃないか」と思うかもしれませんが、こんどは助詞の実例中には、このページでやる補助語幹がうじゃうじゃと出てきてしまいます。つまり、どっちを先に説明しても、まだ説明していないことが出てきてしまうということになってしまいます。ここはちょっとガマンしてください。


  2. 過去を表す았/었
     語幹に았/었をつけると過去になります。았と었の使い分けは「動詞・形容詞の変化」で出てきた連用形の作り方(아/어をつける)と同じです。つまり
    1. 語幹末の字の母音がㅏかㅗ……語幹+았 (例)알다→알았다。가다→갔다。보다→봤다
    2. 語幹末の字の母音がそれ以外……語幹+었 (例)죽다→죽었다。서다→섰다。다니다→다녔다
    3. 하다……하였(縮約形は했)
    です。語幹が母音で終わるときには、その母音と同化・縮約されます。
     このほか、「変則用言」で説明した各種変則用言の活用にも注意してください(連用形はこうなるという説明および、母音語尾をつけるときこうなるという説明を読むこと)。ㄹ変則以外のすべての変則用言で、ヒトクセある作り方になります。
     았/었は、2つくっつけることもあるのですが、2つ目は必ず었になります。2つ使ったときには「~していた」という、過去完了的な意味になります。
     땅에 감추어 두었었나이다 地中にかくしておきました(Mat:25:25)


  3. 推量を表す겠
     語幹に겠をつけると推量になります。文法書によっては「未来」と書いてあることもありますが、過去の았/었と併用されることもあるので「推量」といったほうが混乱がないと思います。
     (例)엉겅퀴에서 무화과를 따겠느냐 あざみからいちじくが採れるだろうか(Mat:7:16)


  4. 尊敬を表す(으)시
     語幹に(으)시をつけると尊敬表現になります(母音語幹には시、子音語幹には으시)。尊敬ですから主語は偉い人、あるいは目の前の相手です。
    わき道になりますが、韓国語では普通に使える2人称代名詞が存在しません。初等文法書には당신が「あなた」だと書いてありますが、夫婦間で使うか、英語のyouの翻訳としてよそ行きの場で使うか、もしくはケンカのときに使うかしかできません。日本語の「あなた」だってそういうところがありますよね。不用意に「あなた!」なんていうとケンカになっちゃいます。
     そこで目の前の相手にどういう言葉を使うか困るときがあるのですが、そういうときのうまい手として、ともかく相手の動作や状態を言うときには用言に시をつけちゃって、主語を省くという手があります。言うならば시を、ヨーロッパの言語でいう2人称語尾みたいに使っちゃうわけですね。


  5. 美化を表す옵/사옵(으옵)
     これは初等文法書にはまず出てきませんので、普通に韓国語を勉強した人だと、「え、何それ?」ということになるかもしれませんが、時代劇ではやたらに出てきますし、聖書にもやたらに出てきます。美化というのは要するに丁寧語です。ですから相手の動作・状態にも自分の動作・状態にも使うのですが、自分の動作・状態の場合は、まるきり自分のことではなく、相手に対して何か働きかけるような動作・状態を表すときに使います。
     (例)예수를 뵈イエスにお目にかかって(Mat:28:17)
     状況によって語形がいろいろ変化しますから注意してください。
     まず、母音語幹には옵、子音語幹には사옵または으옵。사옵のほうが多いと思います。
     それから舌音系子音(ㄷㅈㅊㅌ)で終わる子音につくと자옵になる場合がありますし、았/었/겠のあとでは사옵でなく아옵と書かれることがあります(結局発音は同じ。1988年までの韓国で、았습니다を았읍니다って書いたようなもんね)。
     さらにこの後に母音語尾がつくと오になるのですが、これがまた一筋縄ではいきません。具体的にこの後に来る母音語尾といえば連結器の으がほとんどです(語基式説明では第II語基ってやつです)が、옵+으→오+으→오だけになっちゃうのです。あと可能性としては았/었がつくときですが、옵+았→오+았→왔となります。こっちのほうがまだわかりやすいかもしれません。


  6. 補助語幹をつける順序
     補助語幹は同時に2つ3つと併用することができますが、その場合の順序は
    尊敬の시+過去の았/었+過去の었(2つ目)+推量の겠
    となります。美化の옵は順序が一定しておらず、尊敬の시の前か後、もしくはすべての補助語幹の後に入ってくることがあります。