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第54章 アモロン、とりこの交換を要求する。モロナイ、条件によって要求に応ずる。レーマン人の王、怒って返答をする。 判事治世の二十九年目、アモロンは使者をモロナイに送ってとりこを交換したいと言わせたところ、
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モロナイはとりこのレーマン人に食わせている食料を自分の民を養うのに使いたいと思い、またとりこになっている自分の民を返してもらって自分の軍隊を強化したいと思ったので、アモロンの願いを聞いて非常に喜んだ。
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さてレーマン人は多くの女子供を捕えてとりこにしたが、モロナイの捕えたとりこの中には一人の女子供もなかった。それでなるべく多くのニーファイ人のとりこをレーマン人から取り返すために一つの策をめぐらしてから、
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手紙を書いて、今アモロンの手紙を持ってきた使の者に持ち帰らせた。モロナイがアモロンのところへ書いてやった手紙は次のようである。
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「アモロンよ、見よ、汝がわが民と戦うこの戦、すなわち汝の兄弟がわが民に向って開き、兄弟の死後もなお汝がつづけようと決心をしているこの戦について、われはこの前汝に書き送ったことがある。
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汝がもし悔い改めて汝の軍を所有の地であるニーファイの地へ引き上げないならば、神の正義と汝に下る神の全能である激しい怒りの剣に関ることを汝に告げたい。
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もしも汝が聞き従うことができるならば、われは本当にこれを汝に告げたい。汝がもし悔い改めてその殺害する心をすて自分の国へ軍を引きあげないならば、汝と汝の兄弟のような人殺しを引き込もうと待ちかまえている恐ろしい地獄についても汝に告げたいと思う。
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しかし汝はすでにこのことを否定して主の民に敵対をしたから、われは汝がまたもそうするであろうと思うほかはない。
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見よ、われらは汝の軍と戦う準備を終った。汝らがもしその目的をすてないならば、汝らは否定した神の怒りを自分の身に招いてことごとく亡びるであろう。
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われらは必ずわれらの持つすべての都市、すべての所有地、宗教および神の道を守るから、汝らが自国に退かないならばわが軍は速に攻めて汝らを亡ぼすことは主のましますように確である。
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われは汝を地獄の子であると思う。それであるから、われはこのようなことを言ってもむだであろう。よって、われはこの手紙を書き終るに当って汝に言いたい。汝がもしもレーマン人であるとりこの一人に対して、一人のニーファイ人の男とその妻子とを引きわたすと言う条件に同意しないならば、われはとりこを交換しない。しかし、この条件を承諾するならばすぐに交換をする。
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見よ、汝がこのように交換をしないならばわれは軍隊を以て汝らを攻め、わが国の女子供にも武器を持たせて汝に攻め向い、最初にわれらが住み今は汝らが占めてその国とする土地の真中までも汝らを追撃し血を血に換え命に換えるであろう。われは汝らが全滅してことごく地の面より亡ぼしつくされるまで汝らと戦おう。
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汝らはわれらを殺そうとしているが、われらはただ守ろうとしているだけである。よって、われもわが民も共に憤っている。もしも汝らがなおもわれらを亡ぼそうとするならば、われらもまた汝らを亡ぼそうとし、またわれらが最初住んでいた国を再び統治しようとするであろう。
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これで、この手紙を終る。われはモロナイであって、ニーファイ人の支配者の一人である」と。
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アモロンはこの手紙を受け取って非常に怒り、再びモロナイに手紙を送った。そしてその手紙で、
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「われはレーマン人の王アモロンであって、汝らが暗殺をしたアマリカヤの兄弟である。見よ、われは殺された兄弟の仇を汝らに返し、汝らのおどしを恐れずわが軍を率いて汝らを攻めるであろう。
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見よ、汝らの先祖はその兄弟らが正当に保つはずの政権を奪い取り、不正にかれらを扱った。
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しかし、汝らが武器を引きわたし、正当に政権を保つはずの者に服従してその支配を受けるならば、われはわが兵にその武器を捨てさせてもはや戦をしないであろう。
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汝らは、われとわが国民に対していろいろおどしを吐くが、われらはそのようなおどしを恐れない。
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さりながら、われは汝の要求する通り喜んでとりこを交換しよう。今とりこに食わせている食料をわが軍人の用に供したいためである。交換が終れば、われらはニーファイ人をわれらの主権に従わせるか、または永久にこれを全滅するまで戦いをつづけるであろう。
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われらが神を否定するか汝は言うが、われらはその神と言うものを知らない。汝らもまた知っていない。しかし、神と言うものがあるならば、その神は汝らばかりでなくわれらも造ったにちがいない。
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またもしも悪魔と地獄があるならば、わが兄弟を殺した上にかれは今地獄に居ると暗に言う汝らもまた、悪魔に地獄へ落されてわが兄弟と一しょに居るようにならないとは言えないではないか。しかし、これはどうでもよいことだ。
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われはアモロンであって、汝の先祖が無理にエルサレムからつれ出したゾーラムの後裔である。
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見よ、われは今勇ましいレーマン人である。この戦はレーマン人の受けた害を報い、レーマン人の受けるはずの政権を要求してこれを得るための戦である。これでモロナイへ宛てた手紙を終る」と言った。
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