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「さてそのしるしだが、ごらんなさい。その日が来れば、地上に住む者は大いにあわて、真理の道は隠され、国土は信仰の荒れ地となるだろう。
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あなたが今見ている、そしていままで聞き及んだ不義が、さらに増し加わるだろう。
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あなたが今見ている通り、ローマは世界を支配しているが、やがて乱れて人もいなくなり、人々はこの国が荒れ果てるのを見るだろう。
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しかしもしいと高きお方があなたを生きながらえさせるなら、あなたは三日の後に次のような異変を見るだろう。突然太陽が夜に輝き、また月が昼に照るだろう。
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木から血が滴り、石は叫び、民は混乱に陥り、星のめぐりが変わるだろう。
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そして地に住む者が望まない人物が支配し、鳥は群をなして飛び去るだろう。
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ソドムの海は魚を投げ出し、夜にうなり声をあげる。多くの者にはその意味がわからないが、すべての人がその声を聞く。
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多くの地が割れて深い淵ができ、しきりに火が燃え上がる。野獣はその住み家を棄てて歩きまわり、生理中の女が怪物を産むだろう
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淡水の中に塩水がまじり、友人どうしがみな滅ぼし合うだろう。その時には分別は姿を見せず、知恵は自分の隠れ家に引きこもるだろう。
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多くの人が分別と知恵を探しても見つからず、地上には不正と自分勝手とが増えるだろう。
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そしてある国が隣の国に尋ねて言うだろう。『正しいことを行う人があなたの国を通って行ったか』。でもその国は、いいえと言うだろう。
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その時には人々は望んでも得られず、苦労をしてもその結果が見えてこないだろう。
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ここまでのしるしなら、わたしはあなたに教えてあげられる。もしあなたが再び祈り、また今のように涙を流し、そして七日間断食したら、これらよりもっと大きなことが聞けるだろう」。
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こうしてわたしは目を覚した。わたしの体はひどくふるえ、心は疲れて気が遠くなってしまった。
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するとわたしのところに来て語ってくれた使いがわたしを支え、力づけて、自分の足で立たせてくれた。
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すると二日目の夜、民のつかさパルテルがわたしのところに来て言った。「あなたはどこにいらしたのですか。どうして悲しげな顔をしているのですか。
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それともあなたはイスラエルが捕囚の地ではあなたが頼りなのだということを知らないのですか。
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ですから立ちあがって少しでもパンを食べてください。そして悪い狼の手に羊の群れを引き渡す羊飼いのようにわれわれを見捨てるということを、しないでください」。
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それでわたしは彼に言った。「わたしから離れていなさい。七日間わたしに近づいてはいけない。そのあとでわたしのところに来てください」。彼はわたしの言葉を聞いて離れた。
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それからわたしは天使ウリエルが命じたように、嘆いて涙を流しながら七日間断食した。
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七日たつと、わたしの胸の思いは再びひどく重苦しくなった。
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そしてわたしの魂は悟る力を取り戻し、再びいと高きお方の前で語り始めて、
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言った。「統治者なる主よ、あなたは地上のあらゆる森、そのすべての木々のうちからただ一本のぶどうの木を選ばれました。
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また世界のあらゆる地のうちからご自分のためにただひとつのぶどう畑を選び、世界のあらゆる花のうちからご自分のためにただ一本の百合を選ばれました。
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また海のあらゆる深みのうちからご自分のためにただ一つの河を満たし、また築かれたあらゆる都市のうちからご自分のためにシオンを聖別されたのでした。
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そしてお造りになったあらゆる鳥のうちから一羽の鳩をご自分のものと呼び、あらゆる造られた家畜のうちからご自分のために一匹の羊を備えられました。
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また増えたあらゆる民のうちからひとつの民をあなたのものとされ、あらゆる人に認められた律法をあなたが愛しなさったこの民にお与えになりました。
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ところが主よ、どうしてあなたはこの一つの民を多くの民に引き渡し、一つの根を他の根よりも辱しめ、そしてあなたの唯一のものを多くの人々のうちに散らされたのですか。
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そしてあなたの約束に逆らった人々が、あなたとの契約に忠実だった者を踏みにじったのです。
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もしあなたがあなたの民をこれほど憎まれるのでしたら、ご自身の手で罰せられるべきなのです」。
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ここまで語りおえた時、わたしのところに天使が遣わされた。それは以前の夜にわたしのところに来た天使であった。
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天使は言った。「聞きなさい。そうすればあなたに教えよう。耳を傾けなさい。そうすればもっと話してあげよう」。
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わたしは言った。「わが主よ、お話しください」。すると天使は言った。「あなたはイスラエルのことだと気が変になってしまうのか。それともあなたはイスラエルを作った方以上にイスラエルを愛したとでもいうのか」。
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わたしは言った。「主よ、違います。わたしはただ悲しむあまりに語ったのです。いと高きお方のやり方を理解し、そのさばきをいくらかでも知りたくて、わたしはいつも心が痛むのです」。
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すると天使は言った。「それは無理だ」。わたしは言った。「主よ、なぜですか。どうしてわたしは生まれたのでしょうか。どうして母の体がわたしの墓場とならなかったのでしょうか。生まれていなければヤコブの苦難とイスラエルの疲弊を見ずに済んだのに」。
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すると天使は言った。「まだ生まれていない者の数を数えてみなさい。散った雨粒を集めてみせなさい。しおれた花に緑を戻してみせなさい。
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閉じた蔵を開けて押し込められている風を出して見せなさい。声の姿を形にしてみせなさい。そうすればあなたの知りたがっている悩みを解き明かしてあげよう」。
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そこでわたしは言った。「統治者である主よ、人の世界と異なるところに住む者でなくては、だれがそんなことをできるでしょうか。
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それにわたしは無知な者です。どうしてあなたがおっしゃったことができるでしょうか」。
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すると天使は言った。「いま言ったことがあなたにはひとつもできないように、あなたにはわたしのさばきや民に約束した愛の成りゆきを理解することはできないだろう」。
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それでわたしは言った。「ああ主よ、でもあなたは終わりの時に居合わせる人たちの事はお考えになるとしても、そうでないわれわれは、またわれわれ以前の人や以後の人はどうなるのでしょう」。
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すると天使は言った。「わたしのさばきをひとつの輪にたとえよう。すると最後が遅いこともなく、先頭が早いということもない」。
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そこでわたしは答えた。「あなたのさばきをもっと早く明らかにするために、あなたは過去、現在、未来の人を一度に作ることはできなかったのでしょうか」。
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すると天使は答えた。「造られた物は創造主の先回りをすることはできない。そして世界は造られた物を一度に支えることはできない」。
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わたしは言った。「ではどうして、あなたはお造りになった物を同時に生かすと、このしもべにおっしゃったのですか。つまり、もし造られた物が将来みな同時に生きて、しかも造られた世界がそれを支えられるなら、今だって現在生きているものを同時に受け入れることができるでしょう」。
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すると天使は言った。「女の体に聞いてみなさい。『もしあなたが十人の子を産み出すなら、どうしてその時々に産むのか』と。女の体に、十人を一度に産むように言ってみなさい」。
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わたしは言った。「それは無理でしょう。その時々に産めるだけです」。
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彼はわたしに言った。「わたしもまた大地の上に時に従って蒔かれるもののために、大地を体として与えたのだ。
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幼児は子を産まないし、老女も産まない。わたしは世をそのように造りそのように決めたのだ」。
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そこでわたしは尋ねた。「もうあなたは道を示してくださいました。ではみ前で言わせてください。あなたがおっしゃったわれわれの母はまだ若いのですか。すでに老年に近づいているのですか」。
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天使は答えた。「子を産む女に次のように尋ねれば答えるだろう。
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こうだ。『どうしてあなたがいま産んだ子は、以前の子と違って背が低いのですか』と。
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すると女は答えるだろう。『若い盛りに生まれた子と、年とって体が衰えてから生まれた子とは違うのです』と。
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ここから考えてみなさい。あなたがたは祖先と比べれば背が低く、
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またあなたがたの子孫はあなたがたより小さいのだと。造られた物は年老いて、力強い青年期を過ぎてしまったかのようなのだ」。 そこでわたしは言った。「主よ、お願いです。もしわたしがお許しいただけるのでしたら、このしもべにお示しください。終末には、あなたはだれを通してお造りなった世界にお姿を現わされるのですか」。
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