大きな違いは後半の「おのが力おのが知恵をたのみとせる(旧)/悪しきもののおごりたち、よこしまな(21)」の部分で、旧讃美歌は一貫して4拍子なのですが、21は突然に(楽譜上もなんの断り書きもなく)3拍子になってしまうのです。学校の音楽の時間にこんな楽譜を書いたら音楽の先生に怒られてしまいそうですが、讃美歌21ではこういうことはままあります。
旧讃美歌-267番 Muse MIDI 讃美歌21-377番 Muse MIDI
こうして聞いてみると、ずいぶん豊かなリズムですね。讃美歌21の「突然3拍子」は、原曲の豊かなリズムをある程度再現していますが、原曲はそれをしのぐ豊かなリズムであることがわかります。作曲家としてもルターはあなどれませんし、またこのような歌をうたっていた当時のドイツの音楽事情は、ずいぶん豊かだったことがわかります。
Martin Luther : Ein' feste Burg ist under Gott Muse MIDI
バッハの曲は非常に有名ですが、こうして原曲と聞き比べてみると、バッハの曲で有名な部分というのはただのイントロだったのであり、原曲のコラールとは似ても似つかぬ曲なのですね。バッハの曲をカラオケとしてこのコラールを歌ってみてください。一応MuseファイルにもMIDIファイルにも讃美歌21による日本語歌詞をつけています。Museで演奏したときは赤で表示される部分がコラールの音進行です。やたらにイントロや間奏の部分が長く、なんと歌いにくいことでしょう。ちょっとこれは実用的なカラオケとはいえません。
旧讃美歌-174番 Muse MIDI 讃美歌21-230番 Muse MIDI J.S.Bach : Wachet auf, ruft uns die Stimme (BWV645) Muse MIDI
そして4曲めがこのオルガン曲と同じ趣向で、弦楽合奏の伴奏にのってテノールがこのコラールの旋律をアリアとして歌います。こちらはアリアなので一般会衆が歌うわけではなく、こった伴奏をつけてあってもいいわけです。このプロ歌手が歌うアリアをオルガン曲に編曲したのがBWV645なので、だから素人には歌いにくくても当然なのです。
J.S.Bach : Cantata "Wachet ..." BWV140 - 7 Muse MIDI