[真理子日曜学校 - 聖書の言語入門(フレーム表示) ]
【16世紀ドイツ語コース】
文字の読み方
- 完全アルファベット順・発音のしかた
「ドイツ語の発音なんて簡単さ。規則どおりなんだから」。ドイツ語の先生はみんなそういうんですが、ドイツ語に慣れてるからそう思うだけなんだと思います。確かに規則どおりなんですが、eiがアイ、euがオイだの、独特のクセがいろいろあり、そのクセを覚えるまでが一苦労です。そこでここでは、完全にアルファベット順に、ドイツ語の発音の規則をまとめていきたいと思います。
まずはドイツ語のアルファベットを大文字・小文字で掲げ、次に( )内にドイツ語としてのアルファベットの読みを書きます(別に英語式に読んでもかまわないと思いますけど)。それから昔の本でよく見かける、ドイツ特有の亀の子書体(Frakturと呼びます)を掲げておきます。さらに発音の仕方を説明し、その文字で始まる例外的な規則があれば表示します。
- A a(アー)


ア。ただしアクセントがあり、かつ次が子音連続でなければアーと発音します。- aa…アー
- ah…アー
- ai…アイ
- au…アオ(アウでもいいんですけど)
- ay…アイ
- Ä ä(アー・ウムラオト)


aが文法的に発音変化したものです。大きめの口でエと発音します。アクセントがあって次が子音連続でなければエーと発音します。- äu…オイ
- B b(ベー)


b(ブ)。ただし語末のとき、また次に無声子音が来ているとき(bs、btなど)はp(プ)の発音になります。
- C c(ツェー)


外来語でない限り以下のような組み合わせでのみ出現します。- ch…ハヒフホ。achのときはアハ(アーハ。どういうときに伸ばすかはaを参照。以下同)、ochのときはオホ(オーホ)、uchのときはウフ(ウーフ)、それ以外ではヒと発音します。
- chs…クス
- ck…ック
- D d(デー)


d(ド)。ただし語末のときはt(ト)の発音になります。- dch…トヒなんですが、人によってチュのように発音します。
- ds…ツ
- dt…ト(tと同じ)
- E e(エー)


エ。ただしアクセントがあり、かつ次が子音連続でなければエーと発音します。- ee…エー
- eh…エー
- ei…アイ
- er…rの項参照。
- eu…オイ
- ey…アイ
- F f(エフ)


フ(f)
- G g(ゲー)


g(グ)。ただし語末のとき、また次に無声子音が来ているときはk(ク)の発音になります。- ig…iの項参照
- ng…nの項参照
- H h(ハー)


h(ハフホなど)。- 母音+h…長音化(ah、ehなどの項参照)。
- ch、chs…cの項参照
- I i(イー)


イ。ただしアクセントがあり、かつ次が子音連続でなければイーと発音します。- ie…イー
- ig…これで終わればイヒ、次に母音が来ればイガ、イゲなどgを普通に発音、次にlやrが来ればik(イク)と発音。
- ih…イー
- J j(ヨット)


ヤイユエヨの子音の発音をします。英語のyの発音です。亀の子文字の大文字はIと区別がありません。
- K k(カー)


ク(k)
- L l(エル)


ル(l)
- M m(エム)


ム(m)
- N n(エヌ)


ン(ン)- ng…鼻に抜けるン(またはングと発音するつもりでグを発音しない)。ただし次に母音が来るときにはンガ、ンゲなどgもはっきり発音
- O o(オー)


オ。ただしアクセントがあり、かつ次が子音連続でなければオーと発音します。- oe…エまたはエー。次のöと同じです
- oh…オー
- oo…オー
- Ö ö(オー・ウムラオト)


oが文法的に発音変化したものです。oの口の形でエと発音します。アクセントがあって次が子音連続でなければエーと発音します。- öh…エー
- P p(ペー)


プ(p)- pf…プフなのですが、語末では強めのpのように発音する人も多く、fがほとんど聞き取れません。
- ph…fと同じです。
- Q q(クー)


外来語でもない限りquという組み合わせでしか出現しません。- qu…kwと同じ、クヴと発音。
- R r(エル)


巻き舌でル、またはフランス語のようにのどの奥を鳴らす音です。どちらで読むかは人や地域によって異なります。フランス語式は近代的な感じがするので、聖書朗読や宗教音楽の歌唱など古典的な場では巻き舌のほうが普通です。- er…アー(英語のer)。1音節語やer-という接頭辞のときはエアと発音します。これらはすべて昔はエルのようにrをしっかり発音したので、聖書朗読や宗教音楽の歌唱などの場でははっきりエルと発音することもあります。
- rh…rと同じです。
- S s(エス)



原則としてはズ(英語のz)のように濁ることに注意してください。ただし語末では濁らずス(s)となります。また次に無声子音が来たときもスとなりますが、次にあるようにsp、stではシュとなることがあります。- sch…シュ(英語のsh)。
- sp…語頭ではシュプ、それ以外ではスプ。なお、gespentのようにge-spentという語構成になっているものは、やはり語頭とみなしてゲシュペントと発音します(stも同様)。
- ss…ス
- st……語頭ではシュト、それ以外ではスト
- ß(エス・ツェット)

文字の読み方はszですが、実際にはssであり、スと発音します。ssとßの書き分けは- 前の母音が長い(二重母音含む)とき
- 語末
- 子音の前
のどれかの条件に合致すればßというものでしたが、2006年の正書法変更で多少変わり、1.のときのみßということになりました。が、聖書や宗教音楽では旧正書法のほうが普通ですので、この点は気にしなくて結構です。
- T t(テー)


ト(t)- th…tと同じ
- ti…ラテン語系の語でツィと発音することがあります。特に-tionはツィオンと発音します。
- ts…ツ
- tsch…チュ
- tz…ツ(tsと同じ)
- U u(ウー)


ウ。ただしアクセントがあり、かつ次が子音連続でなければウーと発音します。- uh…ウー
- Ü ü(ウー・ウムラオト)


uが文法的に発音変化したものです。uの口の形でイと発音します。結果的にはユに聞こえますが、日本語のユはあくまず子音イ+母音ウの連続なので、ユ~~~と伸ばしているとウになってしまうのに対し、ドイツ語のユは伸ばしてもユのままです。アクセントがあって次が子音連続でなければユーと発音します。- üh…ユー
- V v(ファオ)


原則としてフ(f)。濁らないことに注意してください。ただし外来語では英語のvのように濁ることがあります。
- W w(ヴェー)


ヴ。英語のvです。
- X x(イクス)


クス、ksと同じです。グズのように濁ることはありません。
- Y y(イプスィロン)


もとはギリシア語系の語にしか登場せず、üと同じくユと発音します。ただし英語系の語ではiと同じくイと読むこともあります。
- Z z(ツェット)


ツ(英語のts)
- アクセント
強弱アクセントで、外国語などの例外を除いて通常は第一音節にあります。ただし非分離の動詞接頭語be-、ge-、er-、ver-、zer-、emp-、ent-にはアクセントがありません。
- äöüßの書き換え
タイプライターなど、äöüßが打てない環境では、ae、oe、ue、ssと書き換えることになっています。「そんなのは昔の話、コンピュータなら無関係さ」と思ったら大間違い。英語のクラシック音楽サイトでドイツ語の歌詞や曲リストを掲載している場合、いまだにこの書き換えをしていることが多いですのでご注意ください。
- 辞書の引き方
上記アルファベット順です。äöüはそれぞれaouの位置に、ßはssの位置にあります。自前で辞書を作るときは、普通にソートするとこのような順番にはならないので、いったんäöüßをa、o、u、ssに変換し、さらにもとからa、o、u、ssである単語の次に位置するように語末に1、2…などの余計な文字をつけた上でソートするなどの工夫が必要になります。