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神を知らず、目に見えるよい者の背後に、それを存在させている者がいるのを知ることができず、できあがったものには目を向けるのにその作者を認めようとしない。まったく人間というものは生まれつきむなしいものだ。
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そのかわりに彼らは、火だの風だの嵐だの、星のめぐりだの洪水だの天の光だのを、宇宙の支配者である神々であると思った。
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しかし彼らが、これらのものの美しさを楽しみ、これらを神だと思ったのなら、これらの作者がその美しさをつくったのだから、その作者はもっとずっとすぐれた方だと知るべきだったのである。
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その力と働きに彼らが驚いたのなら、それらを作った方がどんなに強い方であるかと、それらのものから知るべきだったのだ。
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作られたものの力と美から類推すれば、それらのものの作者が認められるはずだからだ。
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だがこういう人々をそんなに責めるべきではないだろう。神を求め、見出そうと努力しながら、まだ迷っているのだから。
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神のわざをよく知っているからこそ彼らは神を求めているのだから。しかし目に見えるものが美しいので、視覚に頼ってしまうのだ。
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だからといって彼らも言い訳はできない。
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それだけの認識の力を持ち、世界を観察することができるのなら、それらの作り主をもっと早く見出すべきだったのだ。
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彼らはあわれにも死んだものに望みを託し、人が作ったものを神々と呼んだ。人が作った金銀細工や、動物の像。また昔の人が作った無用な石を。
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もしここに木を切るきこりがいて、手ごろな木をのこぎりで切り、皮をすっかりうまくはがして、きれいに整形して、日常の役にたつ器を作ったとする。
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一方で、その仕事の残りの木の切れ端を燃料に食事を作り、腹を満たす。
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そのまた残りの切れ端は、全く役立たない曲がったこぶだらけの木ぎれであるが、それらをとってつかのまのわざをこらして刻み、慣れた手つきで面白半分に形をつくる。こうして人の形を作ったり、
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つまらない生き物の形を作ったり、朱を塗って表面を赤く塗りつぶして、ついているよごれを塗りこんで隠してしまう。
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それからこれにふさわしい家を作り、壁の中に安置して釘でとめる。
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これは像に過ぎず、自分では何もできず、助けが必要なので、倒れないように配慮するわけだ。
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この像に祈りをささげ、生命を持たないものに、財産だの結婚だの子どものことだのについて話しかけても恥ずかしく思わない。こんな弱いものに健康を頼み、
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命のないものに長生きを頼み、まったく経験のないものに助けを求める。旅をしようにも足も使えず、
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何をしようにも手も使えないものに、商売だの仕事だの技術だのの成功を求めようというわけである。
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