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第6章 クモラの丘とそこに埋めた記録。ニーファイ人とレーマン人との最後の戦闘。レーマン人ついに勝つ。ニーファイ人二十四人だけ生きのこる。 さて私は、わが民であるニーファイ人が滅亡した記事を書いて結びとする。私たちはついにレーマン人の前をのがれた。
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私モルモンはレーマン人の王に手紙を書いて、私たちがクモラの地にあるクモラの丘に民を集めるまで猶予されたい。もしそうしてくれるならばクモラの地でレーマン人と戦うことができると言ってやった。
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するとレーマン人の王は私の求めに応じたので、
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私たちはクモラの地へ進んでクモラの丘のまわりに天幕を張った。クモラの地は湖と川と泉との多い所であった。私たちはここでレーマン人に勝ちたいと思った。
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第三百八十四年が終らない前に、民の残りの者を私たちは全部クモラの地へ集めた。
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私たちが民を一団にしてクモラの地へ集めた時、私モルモンはすでに年をとってこれから始まる戦がわが民最後の戦闘であることを知り、また私たちの先祖から伝わったあの神聖な記録を(レーマン人は必ずこれを破壊するから)レーマン人の手に落ちないようにせよと主に命ぜられたので、私はニーファイ版を短くまとめたこの記録を作ってから、主が私の手に委ねたもうたもろもろの記録をみなクモラの丘に隠しておいたが、この僅な版は私の息子のモロナイに伝える。
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さて、私の民とその妻子とはレーマン人の軍が進んでくるのを見た時、すべての悪人の胸に満ちている非常に死を怖れる心を抱いてレーマン人と戦を始める時を待った。
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レーマン人が私たちに近づくと、私の味方は敵の数が多いから一人のこらず非常な恐れを生じた。
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レーマン人は剣、弓、矢、まさかりおよびあらゆる武器を以て私たちを襲ったので、
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私と一しょに居た一万人の部下はうち倒され、私もまた負傷して兵の間に倒れたが、敵は私を殺さずにそこを通り過ぎた。
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レーマン人は私の軍の中を通り過ぎて、私をいれて二十四人(この中に息子のモロナイも居た)を除くほか、私の民をことごとく殺した。そこで私たち二十四人は生きのこり、その翌日レーマン人が陣営に帰ってからクモラの丘の上から見わたすと、私が前列として率いた一万人の兵の殺された所も、
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私の息子モロナイが率いた一万人の兵が殺された所も見えた。
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ギドギドーナの指揮した一万人の兵もギドギドーナと共に死んだ。
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レーマとその一万人の兵と、ギルガルとその一万人の兵と、リムハとその一万人の兵と、ジョニーアムとその一万人の兵と、またカメナイハ、モロナイハ、アンテオーヌム、シブロム、シェム、ジョシとこの六人に属した一万人ずつの兵とは死んだ。
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それだけでなく、このほかになお十人の者とこれに属した一万人ずつの兵も剣にかかって死んだ。一言にして言うと、私の民はただ私も一しょに居た二十四人と南の国々へ逃げた数人と、味方を去ってレーマン人に加わった数人とを除いて一人のこらず殺され、これを殺した者に葬られず地の面に捨てておかれ、その肉も骨も血もみな朽ち果てて母なる大地に帰るに委せられた。
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さて私は死んだ私の民のことを悲しみ悼んで全身が引き裂ける思がし、次のように叫んで言った。
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「美しい者たちよ。お前たちはなぜ主の道を離れたのか。美しい者たちよ。お前たちはなぜお前たちを抱えようとして両手をひろげたもうたイエスを拒んだのか。
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見よ、お前たちはこれさえしなかったならば死ななかったものを。しかしお前たちはもう死んでしまって、私はお前たちの亡いことを悲しみ歎いている。
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美しい息子よ、娘よ、父母よ、夫婦よ、美しい者共よ。どうしてこのように死んでしまったか。
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しかし、お前たちはもうこの世を去ったから、私はこの悲しみでお前たちを呼び返すことはできない。
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しかし、死ななくてはならぬお前たちが不死不滅の者となる日および今朽ちているお前たちの肉体が不朽の体となる日が近い。その日になるとお前たちはそれぞれ行いの善悪に従って裁判を受けるためにキリストの法廷に立たなくてはならない。その時もし義しい者と認められるならば、お前たちより先に死んだ先祖と共に祝福を受ける。
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ああ、この大きな滅亡がお前たちに来ない内にお前たちは悔い改めたらよかったものを。しかし、お前たちはもう死んでしまって天の永遠の御父はお前たちの有様を知りたもうから、その正義と慈愛とを以てお前たちを処置なさるであろう」と。
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