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モルモン経の簡単な解剖
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モルモン経のとびらには、三種の記録版の名があげてある。 すなわち、
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一、ニーファイの版。これはモルモン経の本文から明らかになる様に、二種類からできていた。すなわち、 (イ)大版と(ロ)小版であって、 大版の方にはその記録にある民族の俗事に関わる歴史が特に主として誌してあったが、一方小版の方は、教会に関わる記録がその大部分を占めていた。
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二、モルモンの版。この版にはニーファイの版から造ったモルモンの手に成る抄録と、それといっしょに多くの説明やモルモン自身の書きついだ歴史や、モルモンの息子のモロナイがその他につけ加えたものなどが載っている。
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三、イテルの版。これにはジェレド人の歴史が載っているが、その記録はモロナイが抄録したものである。しかもモロナイは自分の説明をその中に挿し入れ、その記録にイテル書と言う表題をつけて一般の歴史と合併した。
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これらの版にいま一組の版をつけ加えることができるがそれはモルモン経の中にその名がたびたびあげてある版で、すなわち、 四、レーバンの真鍮版である。これはリーハイの民がエルサレムから携えて来たものであって、中にはユダヤの聖典と系図が載っており、これらから取った多くの抜書がニーファイ人の記録の中に見える。
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モルモン経は一つの例外を除いて、ほかは皆各々主たる著者の名を冠した書として知られる十五の主部、または区分からできている。これらの中で最初の六書、すなわちニーファイ第一書、ニーファイ第二書、ヤコブ書、イノス書、ジェロム書およびオムナイ書は、ニーファイの小版の中にあるこれと相当する部分から翻訳したものである。オムナイ書とモーサヤ書との間にモルモン言があるが、これはニーファイの小版に刻まれたままのニーファイの記録と、それ以後の時期に対するニーファイの大版から造ったモルモンの抄録とを結びあわすものであって、このモルモン言はこーファイの記録の先の部分の簡単な説明と後の都分のはしがきを成すものである。
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モーサヤ書からモルモン書第七章に至るモルモン経の主文は、ニーファイの版からモルモンの抄録したものの翻訳である。モルモン経の後の部分、すなわちモルモン書第八章の始めから全巻の終りまでは、モルモンの息子モロナイの手によって刻まれた。モロナイははじめ父の一生の記録を完成しようとして取りかかったが、後にイテル書と呼ばれるジェレド人の記録の抄録をつくった。また後にモロナイは、モロナイ書としてわれわれが知っている部分をつけ加えた。
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モルモン経の年紀が及んでいる期間は、紀元前六百年から、紀元後四百二十一年にわたっている。その後年の頃、ニーファイ人の中で最後の歴史記録者であったモロナイは、古代の予言者たちを通して神の御声によって予言された通り、末日において世に公にされるように、この神聖な記録を封じて人目につかぬように主の手許に託した。
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かくて紀元千八百二十七年に、当時は復活した人物であった同じモロナイが、かの彫刻した版をジョセフ・スミスの手に渡したのである。
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