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さてダリヨス王は盛大な宴会を開き、すべての臣下、すなわちすべての王族、
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メディアとペルシャのすべての高官、インドからエチオピアまで百二十七州に配せられたすべての太守、軍師、総督を招いた。
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一同は思い切りごちそうになって退出した。寝所にさがって床についたダリヨス王は深い眠りにおちた。
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そのとき王の身辺の警護にあたっていた三人の若者は互いに言い合った。
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「さあ、この世で一番強いと思うものをみんな一つずつ言ってみようではないか。わたしたちのなかでいちばん賢い答えをした者が、王様から豪華な贈り物と豪華な賞品をいただくことにしよう。
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その者は紫の衣をまとい、黄金の杯で酒を飲み、黄金の床に臥し、黄金の手綱をつけた馬車に乗り、薄い亜麻布のかぶりものと首飾りを賜わるのだ。
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またその知恵のおかげで、ダリヨス王の隣にすわることができ、ダリヨスの同族と呼ばれることになるだろう」。
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そこでめいめい答を書いて封をし、ダリヨス王の枕の下にいれて言った。
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「王がおめざめになったら、おつきの者がわれわれの書きつけをお渡しするだろう。王とペルシャの三人の高官が判定してもっとも賢いと思われる答えををした者に、その内容に応じて賞を賜わるだろう」。
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一人は、もっとも強いものは酒である、と書いた。
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もう一人は、もっとも強いのは王である、と書いた。
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三番目の者は、もっとも強いものは女であるが、真理はすべてにまさると、と書いた。
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王がめざめると、おつきの者が書きつけをとって渡し、王はこれを読んだ。
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王は使者を遣わしてペルシャとメディアのすべての高官、太守、軍師、総督および執政官を招集した。王が会議室に列席したところで、三人の書きつけが一同の前で読みあげられた。
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「若者たちもを呼んで、本人たちにこの答えの説明をさせよ」と王は言った。彼らは呼ばれてはいって来た。
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一同は、「書いたことについてわれわれに語ってくれ」と言った。そこで、酒だと書いた最初の者が次のように言った。
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「皆さん、どうしてもっとも強いのが酒なのでしょうか。酒はこれを飲む者すべての理性を乱します。
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王であろうと孤児であろうと、奴隷であろうと自由人であろうと、貧者であろうと金持ちであろうと、理性において違いがなくなってしまいます。
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理性はすっかり錯乱して、快楽ばかりを追い求め、悲しみも義務もいっさい頭から消えてしますます。
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だれもが金持ちになっにような気になり、相手が王だろうと太守だろうと関係なく、対等にお金の話ばかりするようになります。
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酒を一杯でも飲むと、友人や兄弟に友情をつくすことを忘れてしまい、突然に剣を抜くこともあるほどです。
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酔いがさめれば、酒のうえでの自分の失態は頭には残っていません。
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皆さん、酒とはこのような行動を人に強いるものなのですから、もっとも強いものと言えるのではないでしょうか」。こう言うと、彼は口をつぐんだ。
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