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第四章 教会の成長。繁栄と高慢と罪悪。ニーファイハ大判事となる。 ニーファイの民を治める判事治世の六年目にはゼラヘムラの地に戦争も不和もなかった。
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しかし民はすでに同胞や家畜の群を失い、レーマン人に畑を踏み荒されて穀物の畑を失い非常に悩み苦しんだ。
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かれらの苦悩はまことにひどかったから民は一人のこらず悲しみにたえず、これは全く自分らの罪悪と憎むべき行いのために受けた神の裁きであると信じたから自分たちの義務を思い出した。
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ここに於てかれらはもっと完全に教会を確立することにとりかかり、多くの人がサイドン川の水の中でバプテスマを受けて神の教会に加えられた。この人たちはアルマからバプテスマを受けたが、このアルマはその父アルマの按手によって教会を司どる大祭司に聖任されていた。
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判事治世の七年目には新に神の教会に入った者が約三千五百人あって、これらの人々はみなバプテスマを受けていた。ニーファイの民を治める判事治世の七年目はこのような有様で暮れ、年中ひきつづき平和であった。
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判事治世の八年目になって教会の会員たちは次第に慢心を起した。それはかれらが勉めはげんで得た非常に多くの富と、精良な絹布、良いリンネル、多くの家畜、金、銀、あるいはあらゆる貴重な品物などを持っていたからである。このようにしてかれらは非常に高価な衣服を身に飾るようになり、上に述べたような財貨を誇ってようやく高慢な心がつのった。
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このようなわけで、アルマもまたアルマが教会の教師、祭司または長老に聖任した多くの人々も非常に心を痛めた。これらの人々はまた教会員の中に罪悪が出てくるのを認めて非常に悲しく思った。
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教会員たちは高慢に流れて富や浮世の無益な物に心を寄せ、互いに侮り合って、自分に同意をせずまた自分の信ずるものを信じない人たちを苦しめるようになったが、アルマを始めとして多くの教師、祭司、長老たちはこの有様を見て大いに悲しく思った。
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このようにして判事治世の八年目に教会員の中にひどい不和が起り、ねたむこと、争うこと、うらむこと、迫害すること、そのほか神の教会に加わっていない者よりもひどく自慢をすることなどがあった。
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このような有様で、判事治世の八年目は暮れて行ったが、教会内部の罪悪は教会の会員でない者たちをつまずかせる石となり、教会の拡張はこのために非常にさまたげられた。
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九年目の始めになって、アルマは教会内の罪悪を見、また教会の悪い手本があるために無信者がますますその罪を深くして人民が亡びるようになることを認めた。
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かれはまた人民相互の間に非常な不平等があって、ある者は甚だしく傲慢になってほかの者をいやしみ、貧しい者や着物のない者や飢えている者や渇いている者や病気をしている者や悩んでいる者をかえりみないことを認めた。
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これはまことに民を非常に悲しませるもとになったことであるが、一方にはへりくだる人たちがあって、およそ救助を要する者を救助し、たとえば貧しい者に持物を分け与え、飢えた者に食物を与えて、予言の「みたま」の示すままに将来降臨したもうはずのキリストのため、ある艱難をその身に受けた。
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そしてキリストが降臨したもう日を待ち望んで罪の赦しを保ち、キリストのみこころと能力とその死の縄目を脱したもうたことによって起る死者の復活のことを考えて非常に喜んだ。
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アルマは神に従う謙遜な人々の艱難辛苦と、ほかの人民がこれらの人たちに加える迫害と人民相互の不平等とを見て非常に悲しくなったが、主の「みたま」はかれを離れなかった。
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アルマは教会の長老の中から一人の賢い人を選び、この人にすでに定められている国法にかなう新しい法律を制定する権能と、人民の罪悪ととがとに応じてこの法律を励行する権能とを民の投票によって与えた。
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この人はニーファイハと言って大判事に任ぜられ、民を裁き民を治めるために裁判の職に就いた。
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しかし、アルマはこの人に教会の大祭司の職を与えないで自分でこの職を保ち、ただ裁判をする職だけをニーファイハにゆずった。
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アルマがこのようにしたのは、自分がその民であるニーファイ人の中を巡ってあるいて、神の道を民に宣べ伝え、民にその義務を思い起させてふるい立たせ、神の道をもって民の間に行われるあらゆる傲慢と狡猾と不和とを抑えようとしたためであった。全く純粋な証しを以てこれを責めるよりほかに民を改心させる道がないと思えたからである。
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このようにしてニーファイの民を治める判事治世の九年目の始めアルマはニーファイハに裁判をする職をゆずって、自分は神の神権の大神権にかかわる職をもっぱら務め、啓示と予言の「みたま」によって神の道を証した。
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