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第28章 レーマン人、ニーファイ人に戦を開く。大きな戦。レーマン人敗れる。深い哀悼。 アンモンの民がジェルションの地に居所を定め、教会もその所に設けられ、ニーファイ人の軍隊がジェルションの地とゼラヘムラの全地やその国境のまわりに配置された後、レーマン人の軍隊は早くもその同胞であるアンタイ・ニーファイ・リーハイ人を追って野へ侵入してきた。
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こうしてここに一つの大戦が始まったが、これはリーハイがエルサレムを去ってこのかた全地の民の中にこれまでなかったほどの大戦であって、レーマン人は数万人も殺されここかしこに散らされた。
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またニーファイの民の軍も大きな殺戮に逢ったが、レーマン人の軍隊はついに追い散らされてニーファイの民の軍は帰国した。
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ここに於て全国いたるところニーファイの民の中に大いに悲しみ歎く声が聞え、
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やもめはその夫の亡くなったのを、親は息子が亡くなったのを、また娘はその兄弟が、兄弟はその父が亡くなったのを歎き、このようにして各人がその殺された親戚を悲しみ悼む声がいたるところに聞えた。
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これはまことに悲しい時であって、人々が真面目になって大いに断食と祈りに努めた時である。
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このようにしてニーファイの民を治める判事治世の十五年目は過ぎ去った。
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アンモンとその兄弟たちの記事、ニーファイの地に於けるかれらの旅行と苦難と悲歎と苦痛と想像も及ばない喜びとの記事、またアンモンの民がジェルションの地へ迎えられて安全になったことの記事は上に誌した通りである。万民の贖い主である主が、アンモンとその兄弟たちとアンモンの民とをとこしえに祝福したまわんことをねがい奉る。
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上に記したのはニーファイ人の国の内部の戦争と不和の記事であって、またニーファイ人とレーマン人との戦の記事である。これで判事治世の十五年目は終った。
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判事治世の一年目から十五年目までの間に幾千人と言う人々が滅亡し、恐ろしい殺伐なことが行われたが、
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死人でそのしかばねを地の中に葬られた者が何千人もあり、そのしかばねを地上につみ重ねられて今もなお朽ちている者が何千人もあり、しかも死んだ親戚のために悲しみ憂いている者がまた何千人もある。なぜならば、主の誓言によってその親戚が永遠に不幸な有様に置かれたと思う理由があるからである。
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また一方では、何千人と言う人たちがその親戚の亡くなったことを悲しんだが、この親戚の人たちがよみがえって、いつまでも尽きない幸福な有様で神の右に居ることを望み、また主の誓約によってこの望みが叶うことを知って非常に喜んだ。
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それであるから、これによって、悪魔が人の心を惑わそうとする工夫をしたずるい悪企から生ずる悪の力と罪と悪事のために、人間が互いに非常に違った者となっていることが明らかである。
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また主の葡萄畑で働く人々が大いに勉めはげまくてはならないことも、また悲しまねばならない重な理由も喜ばねばならない重な理由も明らかである。その悲しみは人間に起る死と滅亡とのために生じ、喜びは生命を与えるキリストの光明のために生ずるのである。
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