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第15章 ゼーズロム、奇跡的に病を医されて教会に入り、教えを宣べ伝える。多くの者がバプテスマを受ける。アルマとアミュレク、ゼラヘムラへ帰る。 アルマとアミュレクとはその市から立ち去れと命ぜられたので、ここを立ってサイドムの地方へ行ったが、ここでアモナイハの地を立ち退いた者たちに逢った。この人々はアルマの言葉を信じたからアモナイハから追い出され、石で撃たれた者たちであった。
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アルマとアミュレクとはここでこの人たちの妻子が逢った災難をくわしく物語り、また自分たちの身の上のこと、自分たちを救い出した能力のことなどを述べて聞かせた。
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ゼーズロムもサイドムに居て燃えるような熱病にかかり床についていたが、この病気はかれの罪悪のために心にはげしい苦しみを覚えて起ったのである。ゼーズロムはアルマとアミュレクの二人がもうこの世にいないと思い、二人が殺されたのは自分の犯した罪悪がもとであると考えて、この大きな罪やそのほかいろいろな罪にひどくかれの心を責められ頭を痛めて少しも慰めを得ず、そのために燃えるような熱で身を焼かれたのである。
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しかし、アルマとアミュレクとがサイドムの地へ来ていると聞いたので、ゼーズロムは心に力を得てすぐ使をアルマとアミュレクの所へやり自分の許へ来てもらいたいと言った。
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アルマとアミュレクとはゼーズロムの頼みに応じてすぐに行ってその家へ入ったが、このときゼーズロムは燃えるような熱病にかかって床に上に臥し危篤の有様であって、その心も頭も罪悪のためにひどく痛んでいた。ゼーズロムは二人を見るや、その手をさし伸べて自分を医してくれと歎願をした。
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そこでアルマは手をとって言った「救いを与えるキリストの能力を信ずるか」と。
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ゼーズロムは答えて言った「さよう。私は汝の教えた一切の言葉を信ずる。」
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アルマはさらに言った「もし汝がキリストの贖罪を信ずるならば医される」と。
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ゼーズロムはこれに答えて言った「はい、私は汝の言った通りに信ずる」と。
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そこでアルマは主に祈り求めて言った「われらの神なる主よ、ねがわくはこの人を憐み、そのキリストに対する信仰に応じてかれを医したまえ」と。
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するとゼーズロムがたちまちとび上って歩き出したので、民は一人のこらずびっくりし、このような奇跡が行われたことがサイドムの全地に言いふらされた。
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アルマゼーズロムにバプテスマを施して主の聖徒とし、それからそこの民の間に伝道を開始した。
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そしてアルマはついにサイドムの地に教会を設立し、誰でもバプテスマを受けたいと思う者はこれにバプテスマを施して主の聖徒とするために、祭司らと教師らとを聖任してその地に置いた。
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バプテスマを受けたいと言う人は多く、サイドムの周囲にある各地から多くの人が集ってきてバプテスマを受けた。
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しかし、アモナイハの地に住む民はやはりまだその心がかたくなで強情であったから、その罪を悔い改めず、アルマとアミュレクの権能はみな悪魔から来たものであるとしていた。なぜならばかれらはニーホル宗を信じて、その罪を悔い改める必要があると信じなかったからである。
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アミュレクはかつて友人であった人たちからすてられ、また自分の父にも親戚にも見放され、アモナイハの地にある自分の金銀、貴重な品々をことごとく神の道のために見捨ててきた。
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アルマはサイドムに教会を設立してから、民が慢心をよく抑えて神の御前にへりくだり、聖壇の前に神を礼拝するためたびたび聖堂に寄り集り、サタンと死と亡びから救われるようにたえず目を覚して祈るようになったことを認めた。
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すでに私が示したようにアルマはこの様子を見て、アミュレクをつれてゼラヘムラの地へ帰り、自分の家にとめてかれが難儀な目に逢ったことを慰め必要なものを与えて、主に対する信仰を強め知識を深くしてやった。
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このようにして、ニーファイの民を治める判事治世の十年目は過ぎて行った。
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