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また、船出して荒波をこえて渡っていこうとする者は、彼を乗せて運ぶ船よりも頼りない木切れに助けを求める。
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船は商売繁盛を願う心で作られたものであり、船大工が知恵をこらして作ったものだ。
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しかし父よ、舵を取るのはあなたの摂理である。あなたは海にも道を、波間にも安全な航路を作ったのだ。
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こうしてあなたは、すべての危険から救う力があると示す。そこで技術のない者でも船に乗れるのだ。
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あなたは知恵のわざが無駄になることを望まない。だから人はほんの小さな木切れに命を託し、いかだで波間を無事に乗り越えた。
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世の始めにおごった巨人が滅んだとき、この世の希望となる人はいかだに乗ってのがれ、あなたの手によって舵を取り、世に生命の糧を残した。
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義を実現させたその木は祝福されるべきである。
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手で作られたものと、その作者は呪われる。作者が呪われるのはそれを作ったから。ものが朽ちるのは神と呼ばれたから。
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同様に、不信仰な者も、不信仰な行為自体も、神に憎まれる。
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作られたものも作者も、ともに罰せられる。
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だから諸国民の偶像に罰が下ることだろう。神が造られたもののうちで忌まわしいものとなり、人々の魂へのつまづきとなり、愚か者の足かせとなったからである。
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偶像への思いは淫行のはじまりであり、偶像を作ることは命を腐らす。
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偶像は最初からあったものではないし、いつまでも続くものでもない。
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偶像は人々の空しい誇りのために世に生まれたものであるから、必ず速やかな終わりが来る。
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早死にした子のために心を痛めた父が、その子の急死のために像を作り、死者を今では神としてあがめ、家族や使用人たちに秘密の儀式を義務づけた。
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それから時がたつと、この不義の習慣が強制され、法として守られるようになる。こうして支配者の命令によって、刻まれた偶像が礼拝されるようになるのだ。
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また王を面と向かって拝むことのできない遠くに住む者に、尊敬すべき王のあらわな像を作り、そこにいない者をいるかのように熱心にへつらい拝むようにさせる。
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像の作者の功名心は、王を知らない者をもかりたてて、神を崇拝するような熱烈な崇拝をさせるのだ。
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彼は王に取り入って技術をこらし、無理やりにその像を実物よりも美しく作り上げるからである。
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愚かな民はその手仕事の美しさに心を奪われ、以前は人間として尊敬しただけの者を、礼拝する対象と考えるようになる。
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これは人の生涯のわなとなった。災難や悪政によって奴隷とされた人間が、人に与えてはならないような神という名を石や木に与えたからである。
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神の知識について間違ったばかりか、無知からおこる戦いのうちに生き、しかもそのわざわいの状態を平和と呼ぶ。
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幼児を殺害する儀式や、隠された秘儀、みだらな風習の限りを尽くし、
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生活も結婚も不潔なものにしてしまい、他人を裏切って殺し、姦通によって人を苦しめる。
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流血、殺害、盗み、欺き、腐敗、不信、騒ぎ、偽証をとりまぜ、
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善人を不安にし、恩を忘れ、魂をけがし、性の区別を乱し、結婚を破壊し、姦淫と淫行をおこなう。
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実体のない偶像を拝むことは、あらゆる悪の始まりであり、原因であり、帰結である。
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彼らは狂喜し、偽りを予言し、不義に生き、安易に偽証する。
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魂のない偶像を信じて誓いをたてるが、それで罰せられるとは思いもしない。
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彼らがさばかれる罪は次の二つである。一つは、偶像にこだわって神に不義の思いを抱いたこと。もう一つは、聖なるものを軽蔑して、偽りの誓いをなしたことである。
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彼らが誓った神々が罰を与えるのではない。不義の者に対する神の罰こそが、彼らの罪を追跡するからである。
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