|
[9]見よ、その望みはむなしくなり、これを見てすら倒れる。
|
|
[10]あえてこれを激する勇気のある者はひとりもない。それで、だれがわたしの前に立つことができるか。
|
|
[11]だれが先にわたしに与えたので、わたしはこれに報いるのか。天が下にあるものは、ことごとくわたしのものだ。
|
|
[12]わたしはこれが全身と、その著しい力と、その美しい構造について黙っていることはできない。
|
|
[13]だれがその上着をはぐことができるか。だれがその二重のよろいの間にはいることができるか。
|
|
[14]だれがその顔の戸を開くことができるか。そのまわりの歯は恐ろしい。
|
|
[15]その背は盾の列でできていて、その堅く閉じたさまは密封したように、
|
|
[16]相互に密接して、風もその間に、はいることができず、
|
|
[17]互に相連なり、固く着いて離すことができない。
|
|
[18]これが、くしゃみすれば光を発し、その目はあけぼののまぶたに似ている。
|
|
[19]その口からは、たいまつが燃えいで、火花をいだす。
|
|
[20]その鼻の穴からは煙が出てきて、さながら煮え立つなべの水煙のごとく、燃える葦の煙のようだ。
|
|
[21]その息は炭火をおこし、その口からは炎が出る。
|
|
[22]その首には力が宿っていて、恐ろしさが、その前に踊っている。
|
|
[23]その肉片は密接に相連なり、固く身に着いて動かすことができない。
|
|
[24]その心臓は石のように堅く、うすの下石のように堅い。
|
|
[25]その身を起すときは勇士も恐れ、その衝撃によってあわて惑う。
|
|
[26]つるぎがこれを撃っても、きかない、やりも、矢も、もりも用をなさない。
|
|
[27]これは鉄を見ること、わらのように、青銅を見ること朽ち木のようである。
|
|
[28]弓矢もこれを逃がすことができない。石投げの石もこれには、わらくずとなる。
|
|
[29]こん棒もわらくずのようにみなされ、投げやりの響きを、これはあざ笑う。
|
|
[30]その下腹は鋭いかわらのかけらのようで、麦こき板のようにその身を泥の上に伸ばす。
|
|
[31]これは淵をかなえのように沸きかえらせ、海を香油のなべのようにする。
|
|
[32]これは自分のあとに光る道を残し、淵をしらがのように思わせる。
|
|
[33]地の上にはこれと並ぶものなく、これは恐れのない者に造られた。
|
|
[34]これはすべての高き者をさげすみ、すべての誇り高ぶる者の王である」。
|