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第14章 地が受けたのろい。引きつづき争いと流血がある。コリアントメルは剣によって倒れない。 国民の悪事のために、地の全体はおそろしいのろいを受けた。人がもしその器具または剣を棚の上またはいつも置いておく所へ置くというと、翌日これを見つけることができなかったほどのろいがひどかった。
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それであるから人はみなその品物を固く手に持って、借りようとも貸そうともせず、自分の財産生命および妻子たちを護るためにたえず右手に剣のつかを握っていた。
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二年たってから、すなわちシェレドが死んでからジェレドの兄弟が出てきてコリアントメルと戦ったが、その戦でコリアントメルはシェレドの兄弟に勝ちこれをエキシの野まで追撃して行った。
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今やシェレドの兄弟はエキシの野でコリアントメルと戦い、その戦は非常に激しくなって剣にかかって命を落した者は何千人とあった。
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コリアントメルはエキシの野をとりかこんだが、シェレドの兄弟は夜の間に野を出てコリアントメルの軍の一部で酒に酔っていた者どもを殺し、
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それからモロンの地へ進んで行って、自分からコリアントメルの王座へのぼった。
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それでコリアントメルは自分の軍隊と一しょに二年間野の中で暮し、その軍を非常に強くした。
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シェレドの兄弟はその名をギリエドと言ったが、ギリエドもまた秘密結社によってその軍の力を非常に増した。
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しかしギリエドがその王座に就いていたとき、かれの大祭司が出てきてギリエドを殺した。
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その後秘密結社に属する一人の者が、秘密の道路でこの大祭司を暗殺して王の位を奪った。この男はリブと言う名で、全国の誰よりも高い身のたけがあった。
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リブの治世第一年に、コリアントメルは軍を率いモロンの地へ進軍してリブの軍と戦った。
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そしてリブとわたり合ったが、リブはコリアントメルの腕に傷を負わせた。しかしコリアントメルの兵が前へ進んでリブに迫ったのでリブは海岸にある国境まで逃げて行った。
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そしてコリアントメルがこれを追ってきたときリブはコリアントメルを海岸で迎えて、
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その軍をうち破ったのでコリアントメルの兵はまたエキシの野へ退いた。
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リブはこれをエゴシの平原まで追って行ったが、コリアントメルは逃げながらかれが通った土地の人々を悉く引きつれて自分の軍に加えたから
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エゴシの平原に着くと、リブと戦ってリブの死ぬまでこれを撃った。しかしリブの兄弟はリブの後を受け、コリアントメルと戦おうとして出撃してきたからその戦はまことにひどい戦となり、コリアントメルはついにリブの兄弟の軍かに逃げた。
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リブの兄弟はその名をシズと言った。かれはコリアントメルを追って道すがら多くの都会を亡ぼし、女子供を殺し、その町々を焼き払った。
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これによってシズを恐れる恐怖は全国に伝わり「シズの軍に向って堪えられる者があるか。見よ、シズは地を荒して通って行く」言う叫び声は全国にひびきわたった。
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そこで国民は全国のあちこちに集って軍隊を組織した。
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しかしかれらの心が一致していなかったから、ある者はシズの軍に加わり、ある者はコリアントメルの軍に加わった。
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戦は大きくまた長くつづいてその流血と殺戮が久しくやまなかったから、全地の面に死骸が満ちみちた。
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そして戦の経過が急速であったから死者を葬る者をあとに残さないで、殺戮の場から殺戮の場へ進んで行き、男女子供の区別なくその死体を地に倒れたままに捨てて置きこれを蛆が食いつくすのに任せた。
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そしてその臭気がひろがって全国に満ちみちたので、人民は夜昼その臭気になやまされた。
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しかもシズは殺された兄弟の仇をコリアントメルに必ず返すと言う誓いと、主が「コリアントメルは剣にかかりて死すべからず」とイテル仰せになった御言葉を必ずむだにすると言う誓いとを立てたから、コリアントメルを追いかけることをやめなかった。
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これによって、主がすでにその烈しい怒りを民に下したもうたことと、民の罪悪と憎むべき行いとによって、民の永遠の滅亡の道が備えられたことが明らかにわかる。
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シズは東の方へコリアントメルを海岸に近いところまで追いかけたが、そこでコリアントメルは逃げるのをやめて三日の間シズと戦った。
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この戦でシズの軍が受けた損害はひどくてその兵士が恐れてコリントメルの軍から逃げ出したほどであった。その兵はコラホルの地まで退却したが、その途中味方になって軍に加わることを拒んだ民をみな殺し、
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コラホルの谷に陣を張った。一方、コリアントメルはシャルの谷に陣を取った。シャルの谷はコムノルの丘に近いのでコリアントメルはコムノルの丘にその軍を集めてシズの軍に向ってラッパを吹きならしこれに戦をいどんだ。
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やがてシズの軍が進んできたが追い払われた。かれらは再び進んできて再び追い払われた。三度目に攻めてくるとその戦はまことに惨酷な戦になった。
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この戦でシズはコリアントメルを撃って重い傷を多く負わせたので、コリアントメルは血を失って気絶し、死んだ者のようによそへかついで行かれた。
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さて両方の軍はどちらも男、女、子供の死者の数が非常に多かったので、シズはコリアントメルの軍を追跡するなと自分の軍に命じた。そこでシズの軍はその陣へ帰った。
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