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百四十九(紀元前百六十三)年、アンテオコス・ユパトルが軍を率いてユダヤに侵入し、ユダの軍隊をおそった。
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これには王の摂政として国務をあずかっていたルシアも加わっていた。ルシアはさらに十一万人の歩兵、五千三百人の騎兵、二十二頭の象と三百の鎌つき戦車からなるギリシヤ式の軍隊を持っていた。
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メネラオもこの一行に加わり、お世辞を言ってアンテオコスをそそのかした。彼は祖国の救いを考えたのではなく、自分が長官になりたかったのである。
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しかし王の王であるお方は、この罪深い男に対する怒りをアンテオコスに起こさせ、ルシアもこの男があらゆるわざわいの根源であると証言したので、アンテオコスはメネラオをベレアに連行して、この地のやり方にしたがって処刑するように命令した。
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ここには灰のつまった高さ五十ペキスの塔があり、内側はすべてらせんの形になっており、灰にむかって落とす道具がついていた。
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神殿のものを盗んだり、数々の悪事を重ねた者を、人々はここにぶらさげて、灰の中に突き落として殺すのである。
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律法をないがしろにしたメネラオはここで殺され、埋葬もされなかった。
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聖なる火と灰のある祭壇に対して多くの悪事を重ねたメネラオが灰の中で処刑されるとは、まったく正しい報いであった。
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さて、王の心は荒々しくなり、父がしたことで最もひどいことをユダヤ人に対してしてやろうと考えた。
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ユダはこの知らせを聞くと、夜も昼も主に叫んでこう祈るよう人々に命じた。「以前に助けてくれたように、今もわたしたちを助けてください。
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律法と祖国と聖なる神殿を奪われようとしているわたしたちを助けてください。ようやくしばしの平和を得たばかりのわたしたちを、不信仰な異邦人の手に渡さないでください」
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命令された者たちはみな、三日間休みなく涙を流し、断食をして地にひれふして、あわれみ深い主に祈り続けた。その後ユダは彼らを集めた。
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長老たちをまじえて討議した結果、王の軍隊がユダヤに侵入して都市を占領しないうちに、神の助けをたのんでこちらから討って出ようと決意した。
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世界の創造主を信頼し、律法と神殿、エルサレムと祖国、生活習慣を守るために命がけで戦えと、彼は味方を励まし、モディンに陣営をはった。
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そして「神の勝利」という合言葉を兵士たちに与え、夜になるのを待って、選び抜かれた若者たちとともに王の幕屋を襲い、宿営の中の敵兵を二千人殺し、一番立派な象をその象使いと一緒に刺し殺した。
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こうして敵の軍を恐怖と混乱におとしいれ、意気揚々と引き上げた。
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ユダには主の助けが加えられていたので、夜が明けるとすべてのことがもう終わっていた。
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ユダヤ人の勇気を身にしみて感じた王は、こんどは策略を用いて攻撃しようと思った。
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そこでユダヤ人の堅固な要塞であるベテスラに近づいたが追い返され、ふたたび攻撃を加えたがユダヤ人に敗れてしまった。
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ユダはベテスラの市民たちに必要な物資を送り込んでいた。
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しかしユダヤ人の部隊のロドコスが敵に秘密を漏らしてしまったので、ユダは彼を捕えて牢に入れた。
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王はふたたびベテスラの市民たちと会談し、和議を結んでそこを離れると、
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今度はユダの軍隊を攻撃したが、またも敗北を喫した。王はアンテオケに残して国事をゆだねていたピリポが反乱を起こしたことを聞くと、あわててユダヤ人に使者を遣わし、ユダヤ人の申し出どおりすべて正当な条件にしたがうことを誓い、ユダヤ人と一緒に神殿に赴いていけにえをささげ、神殿をうやまい、ここを寛大に扱った。
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そしてマカビオを受け入れ、トレマイからゲルレニヤまでの地の長官としてヘゲモニデスを残して、
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トレマイに向かった。トレマイの市民たちはユダヤ人と仲が悪かったので条約に関して不満を持ち、なんとかこの条約を無効にしたいと望んでいた。
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ルシアは演壇に立って力の限りこの条約を弁護し、彼らを説得し、なだめ、機嫌を直してから、軍隊を率いてアンテオケに向かった。王の侵入と帰還の次第は以上のとおりであった。
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