|
第五章 サライア、リーハイに向って苦情を言う。両親共に息子たちの帰りを見て喜ぶ。真鍮版の内容。リーハイはヨセフの子孫。レーバンもまた同じ系統。リーハイの予言。 私たちが荒野へきて父のところに着いてからは、ごらん、父は喜びが胸一ぱいに溢れ、また母のサライアもほんとうに私たちのことで悲しんでいたから非常に喜んだ。
|
|
それは、母が私たちは荒野の中で死んでしまったと思って父に向い、父は幻に耽る人だと言い「ごらん、あなたは私たちを先祖から受け嗣いだ土地からつれ出してきたので息子たちは死んでしまった。私たちも荒野で死んでしまう」などと苦情を言っていたからである。
|
|
母はこんな風な言葉で父に向って苦情を言った。
|
|
ところが父は母に向って「私は私が幻を見る者であることをよく承知している。もしも私が示現の中で神の為したもうことを見なかったなら、私は神の恵みを知らずにエルサレムに踏み留り、私の兄弟たちといっしょに亡びてしまったであろう。
|
|
しかしながらごらん、私は約束の地をいただいているからまことに喜ばしく思い、また主が私の息子たちをレーバンの手から救い出し、荒野の中にいる私たちの手もとへまたつれ戻して下さることを承知している」と言った。
|
|
こう言う風な言葉で父のリーハイは、私たちのことについて母のサライアを慰めたのであったが、それは私たちがユダヤ人の歴史を手に入れるために、エルサレムの地へ向って荒野の中を旅行していた間のことであった。
|
|
だから、私たちが父の天幕へ帰ってくると、父母は喜びが胸一ぱいに溢れ、母はその心を慰められて、
|
|
「私は今、主が私の夫に荒野へ逃げよと命じたもうたことを確かに覚った。また私は、主が私の息子たちを守りたもうてレーバンの手から救い出し、息子たちに命じたもうたことを為しとげる力をさえ、与えたもうたのを確かに覚った」とこう言う風な言葉で言った。
|
|
そして、父母は非常に喜んで牲と燔祭とを主に捧げてイスラエルの神に感謝をした。
|
|
そしてイスラエルの神に感謝を捧げてから、私の父リーハイはあの真鍮版に刻んだ歴史を手にとってこれを最初からしらべてみた。
|
|
父がこれを見ると、その中には世界の創造と、人間最初の先祖であるアダムとエバの記事をのせたモーセの五書もあれば、
|
|
また、世の始めから、ユダヤの王ゼデキヤの代の始めに至るユダヤ人の歴史も見え、
|
|
また世の始めからゼデキヤの代の始めに至るまでの聖い予言者たちの予言や、そのほかエレミヤの述べた多くの予言ものせてあった。
|
|
私の父リーハイは、またこの真鍮版にその先祖の系図がのせてあることを見つけたから、それによって自分がヨセフの子孫であることを知った。このヨセフとはすなわちヤコブの子のヨセフであって、エジプトへ売られ、その父ヤコブとその全家が飢饉に逢って飢死をせぬように守るために、主の御手によって保護されたあのヨセフである。
|
|
そして、ヤコブの子孫を保護したもうたと同じ神は、またヤコブの子孫を奴隷の身から救い出し、これをエジプトの地から導き出したもうた。
|
|
このように私の父リーハイはその先祖の系図を見つけたが、レーバンもまたヨセフの子孫であったから、レーバンとその先祖はこの歴史を書いて置いたのである。
|
|
さて私の父はこれらのことを皆見ると、「みたま」に満たされてその子孫について予言をし始めた。それは、
|
|
この真鍮版は父の子孫にゆかりのあるあらゆる国民、あらゆる血族、あらゆる国語の民、あらゆる人々に伝わる。
|
|
そう言うわけで、この真鍮版はけっしてさび腐ってしまわず、またこれから先いかに年月がたっても、少しもかすれて見えなくなることはないと言い、なお父の子孫について多くのことを予言したのである。
|
|
これまで私と父とは主が下したもうた命令を守っていて、
|
|
主が手に入れよと仰せになった歴史をすでに手に入れ、これを調べてみてまことに望ましいものであることがわかった。また実際これによって私たちの子孫に主の命令をのこすことができるから、私たちにとって大そう価値のあるものであることがわかった。
|
|
こう言うわけで、私たちが約束の地を指して荒野の中を旅行しながら、この真鍮版を持って行くのは主のみこころにかなうことであった。
|