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ヨブの弁解の続き。
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「神様が目をかけてくださった昔がなつかしい。
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神様はわしの歩く道を照らしたので、暗やみの中を歩いても無事だった。
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まだ若かったころ、神様のあたたかい思いやりは、家の中でも感じられた。
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全能者はわしとともにいたし、子供たちも回りにいた。
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手がけることはみなうまくいき、岩でさえ、わしのためにオリーブ油を注ぎ出した!
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あのころ、わしは町の門に行き、名誉長老の席に座った。
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青年たちはわしを見ると道をあけ、年寄りでさえ、わざわざ起立して敬意を表した。
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領主たちは立ったままおし黙り、手を口にあてた。
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町の最高幹部は声をひそめた。
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だれもがわしの言うことに聞き惚れ、わしをほめそやした。
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わしは曲がったことの大きらいな判事として、生活苦にあえぐ貧しい人や、身寄りのないみなしごを助けてきた。
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死にかかっている者に救いの手を伸ばすと、彼らはわしを祝福した。 気の毒な未亡人には、喜びの歌をうたえるようにしてやった。
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わしのすることはみな正しく、嘘偽りがなかった。 正義こそ、わしの衣だったのだ。
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盲人には目となり、足の不自由な人には足となって仕えた。
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貧しい者には父親のようになり、一面識もない者でも、公平な裁判が受けられるように面倒をみた。
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神様など眼中にない無法者の牙を折り、口にくわえていた犠牲者を助け出した。
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そこで考えたものさ。 『きっと幸せいっぱいの長寿を全うし、たたみの上で大往生を遂げるだろう』とな。
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わしのすることはみな栄え、畑は夜露でうるおった。
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次々と名誉が与えられ、わしの手腕は日ごとにみがきをかけられ、さえわたった。
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だれもがわしのことばに耳をすまし、わしの意見を尊重した。 人々はわしが発言するまで静粛そのものだった。
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わしが話し終えると、それ以上何も言わなかった。 わしの助言が彼らをたんのうさせたからだ。
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彼らは日照りの時に雨を待ちこがれる人のように、わしが語りだすのを、今や遅しと待ち受けた。 口をあけ、真剣そのものの表情で待った。
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失意に沈んでいる時でも、わしが笑っただけで元気づき、明るさを取り戻した。
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わしは彼らにどうすべきかを教えた。 また、指導者、閲兵式に臨む王、嘆く者を慰める者として、彼らに接した。
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