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なぜ、神様は法廷を開いて、わしの訴えを聞いてくれないのか。 なぜ、信心深い者が待ちぼうけをくうのか。
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犯罪はうなぎ上りで、地境は移され、羊の群れは盗まれ、
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貧しい人やみなしごのろばまで奪われているではないか。 その日暮らしの未亡人たちは、担保に入れたわずかの物さえ取り立てられる。
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生活に困っている者は蹴倒され、すごすごと引き下がる。
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貧しい人は、野ろばのように、足を棒にして一日分の食いぶちをあさる。 子供の食べる物を捜しに、荒野にまで出かける。
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彼らは野生のものを口に入れ、悪者のぶどう畑の取り残しにさえ手を出す。
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寒中でも、着る物も上にかける物もないままで夜を過ごす。
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山でにわか雨に会ってずぶ濡れになり、住む家もないので洞窟の中で生活する。
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悪者は父なし子を母親の乳房からもぎ取り、貧しい人に金や穀物を貸す前に、まずその赤ん坊を質草として取る。
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だから貧しい人は着物もなく、裸で歩き回り、すきっ腹をかかえて他人の食糧をかつぐ。
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オリーブ油を絞りながらも味見できず、ぶどうの実を踏みながらも、のどの渇きを訴える。
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町の中から瀕死の病人のうめきが起こり、傷ついた者は助けを求めて叫ぶ。 しかし、神様は彼らの嘆きに耳を貸さない。
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悪者は光に反抗し、正義と善になじまない。
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[14-15]彼らは人殺しだ。 夜明けとともに起き、生活に追われる者を殺す。 夜になると盗賊と姦通者に早変わりし、『だれにも気づかれない時がきたぞ』とほくそ笑み、夕暮れを待ち受ける。 正体を見破られないように覆面をつけ、
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夜の闇にまぎれて家々に押し込み、昼間は高いびきをかく。 こんなにも光と無縁の者なのだ。
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彼らには暗い夜が朝で、彼らは暗黒の恐怖と手を結ぶ。
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だが、彼らはあっという間に地上から姿を消す。 その持ち物はのろわれ、子供に財産を残せない。
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雪が日照りと暑さで跡形もなく消えるように、罪人は死ぬと影も形もなくなる。
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生みの親さえ彼らを忘れ、うじが寄ってたかって彼らを食い尽くす。 二度と人の話題にのぼらない。 悪人は、もろに嵐を受けた木のようにへし折られる。
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頼りになる子供のいない者を食い物にし、その日暮らしの未亡人を助けなかったからだ。
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[22-23]ところが、どうしたことだろう。 神様は金持ちを保護し、ほかの者は死ぬのに、彼らだけ長生きさせることがある。 彼らに自信と力を与え、何くれとなく面倒を見る。
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だが、今はわが世の春と思っていても、彼らもやはり、麦の穂のように刈り取られ、帰らぬ人となる。
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だれが、そうでないと言えよう。 だれが、わしはうそつきだと証明し、わしの言うことはまちがいだときめつけられるだろうか。」
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