|
忙しさに明け暮れするのは万人の運命。アダムの子たちの上には、母の胎を出た日から万人の母のもとへ戻る日まで、重いくびきがのしかかっている。
|
|
人の思索や内心の不安は、死を迎える日を待ってのあせりである。
|
|
華やかな王座に座る者をはじめとして、地にはいつくばって生きるうだつのあがらない者まで、
|
|
紫の衣をまとい、王冠をいただく者をはじめとして、麻の粗い布の服を着ている者まで、
|
|
立腹、嫉妬、動揺、不安、死の恐怖、怨恨、いさかいはみんな同じ。床について休んでいても、悪い夢を見て気が動転する。
|
|
安らぎとは名ばかり。だから寝ていても昼間と同じくらい消耗し、脱走兵のように悪夢に悩まされる。
|
|
熟睡しないうちに目が覚め、なんでもないことにおびえていた自分をいぶかる。
|
|
人間をはじめとして動物にいたるまで、ただし罪びとはその七倍であるが、すべて肉なる者につきものなのは、
|
|
死、殺人、いさかい、刃傷、災難、饑饉、破滅、そして神の罰である。
|
|
これらはすべて律法に背く者たちのためにつくられたのである。あの洪水が起こったのも彼らのせいであった。
|
|
大地から出たものはことごとく大地に戻り、水から出たものは海へもどる。
|
|
わいろと不正は一掃されるが、誠実は永遠に残る。
|
|
不正な者の財宝は川のように干上がる。雨を伴ったうるさい雷鳴が遠のいていくようになくなってしまう。
|
|
ほどこしの手を差し伸べてやる者は喜びに満ち、律法に背く者は滅びて行く。
|
|
神を敬わない者の子孫の枝葉は増えず、けがれた根は岩山の崖っぷちにひっかかっている。
|
|
どこの川辺にも生えている草は、ほかのどの草よりも先に引き抜かれる。
|
|
親切は幸福に満ちた楽園のようなもの。慈善の行為は永久に残る。
|
|
雇われ者の生活も、自営業の生活もすばらしいが、どちらにも勝るのは宝を発見することである。
|
|
子を作っても町を建設しても、人の名声を確立するが、どちらにも勝って評価されるのは非の打ち所のない妻である。
|
|
酒と歌は心をうきうきさせるが、どちらにも勝るのは知恵を愛する心である。
|
|
笛と竪琴は美しい音楽をかなでるが、どちらにも勝るのは美しい談話である。
|
|
愛らしさと美しさを人の目は求めるが、どちらにも勝るのは青々とした若草である。
|
|
友や仲間と時々会うのは楽しいが、どちらにも勝るのは夫に連れ添った妻である。
|
|
兄弟や後援者は困ったときにはありがたいが、どちらにも勝って助かるのは施しである。
|
|
金も銀も一応の土台を築いてくれるが、どちらにも勝って高く買われるのはしっかりした意志である。
|
|
財産と権力は人に自信をつけるが、どちらにも勝るのは主を畏れる心である。主を畏れるならば何一つ不自由はなく、主のほかに助けを求める必要もない。
|
|
主を畏れる心は幸福に満ちた楽園のようなもの。どんな名誉にも勝る守りである。
|
|
子よ、物乞いをして一生を過ごすな。物乞いをするくらいなら死んだほうがよい。
|
|
他人の食卓に目を奪われるような者の人生は人生の名に値しない。他人に食べさせてもらっていては精神が腐る。良識と教養をそなえた人ならばそういう生活を警戒するだろう。
|
|
恥知らずの者は物乞いの生活も楽だというが、やがてその言葉が腹の中で火のように燃え上がるだろう。
|