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そして三日目、わたしはかしの木の下にすわっていた。
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すると、灌木のしげみからわたしに向かって「エズラよ、エズラよ」と声がしたではないか。わたしは「主よ、ここにおります」と言って立ち上がった。主はわたしに言われた。
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「わたしの民がエジプトで奴隷だった時、わたしは灌木のしげみで自らを啓示してモーセと語った。
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わたしはモーセを遣わしてわたしの民をエジプトから導き出し、彼らをシナイ山に連れて行った。そしてモーセを何日間もわたしのもとに引き止めた。
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わたしは彼に多くの不思議を語り、時の秘密と時の終わりを示した。そして彼に命じて言った。
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『この言葉を公表しなさい。この言葉は秘密にしなさい』。
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そして今わたしはあなたに言う。
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わたしが示したしるし、あなたが見た夢、あなたが聞いた解釈、それらを心にしまっておきなさい。
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というのは、あなたはやがて人々のうちから挙げられ、その後わたしの子やあなたのような者たちと共に時が終わるまで過ごすであろう。
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なぜなら世はその若さを失った。そして時はまさに老いようとしている。
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というのは世は十二の時代に分かれているのだが、すでに九つの時代と十番目の半分が過ぎ去ったのだ。
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つまり、残っているのは十番目の半分と、あと二つの時代というわけだ。
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だから今こそあなたの家を整え、あなたの民を戒めなさい。彼らの中の卑められた者たちを慰め、もはや朽ちてしまった命とは縁を切りなさい。
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死に至る思いわずらいを追い払い、世間の重荷を投げ捨て、弱い本性を脱ぎ捨てなさい。あなたをひどくわずらわせている思いはほうっておいて、急いでこの時代から立ち去りなさい。
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なぜならあなたは今さまざまな不幸が起こるのを見たが、それよりももっと悪いことが再び起こるであろう。
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この世が年をとって弱くなればなるだけ、悪はそこに住む人々の上に増すであろう。
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実際に真理はますます遠ざかり、偽りは近づいた。というのはあなたが幻の中で見たわしがもうすぐやって来るからである」。
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わたしは答えた。「主よ、み前で語ることをお許しください。
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ご覧ください。ご命令の通りわたしは立ち去り、今生きている民を戒めるでしょう。しかし後から生まれる者たちをだれが諭すのですか。
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すなわち世は闇の中に置かれ、そこに住む者たちには光がありません。
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なぜならあなたの律法は焼かれ、そのためだれもあなたがすでになさったことも、また今後どんなみ業が始まるのかも知らないのです。
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ですからもしお許しいただけるのなら、わたしのうちに聖霊を送ってください。そうすればわたしはこの世で初めから起こったすべての事、あなたの律法のうちにしるされていた事を書きしるしましょう。人々があなたの道を見出すことができるように、終わりの時に生きたいと願う人々が生きられますように」。
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主は答えた。「行って民を集め、四十日の間彼らがあなたを探さないよう言いなさい。
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そしてあなたは多くの書き板を準備し、速記のできる五人の者、すなわちサレア、ダブリア、セレミア、エタヌス、アシエルを連れて、
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ここに来なさい。そうしたらわたしはあなたの心に知恵の火をともそう。その知恵の火は、その時からあなたが書き終えるまで消えることはないであろう。
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そして完成したら、ある部分は公表し、ある部分は秘密として賢者たちに渡しなさい。では明日のこの時間から始めなさい」。
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そこでわたしは命じられたように出かけて行き、すべての民を集めて言った。
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「イスラエルよ、この言葉を聞け。
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われわれの祖先ははじめエジプトではまさに異邦人として在留したが、そこから救い出された。
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そして彼らは生命の律法を受けたがそれを守らなかった。彼らの後のあなたがたもまたそれを犯した。
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さてあなたがたの分としてシオンの地に土地が与えられた。しかしあなたがたも先祖たちも不義を行ない、いと高きお方が命じられた道を守らなかった。
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主は正しい裁判官であるから、時が来ると、以前お与えになったものをあなたがたから取り上げられた。
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今あなたがたはここにいる。そしてあなたがたの兄弟はあなたがたよりもっと奥地にいる。
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だからもしあなたがたが自らの思いを制し心をきたえるなら、あなたがたは生きている時は守られ、死んだ後は憐れみを受けるであろう。
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すなわちわれわれが死んで生きかえる時にさばきがあり、その時に正しい者たちの名は現われ、不正な者たちの行ないは明るみに出るであろう。
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しかし今はだれもわたしに近づいてはいけない。四十日間わたしを探してはならない」。
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そこでわたしは主が命じられたように五人の男を連れて野に向かい、そこにとどまった。
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そして翌日、わたしを呼ぶ声がしたではないか。「エズラよ、口を開いてわたしが飲ませるものを飲め」。
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わたしは口を開けた。満たされた杯が差し出されたではないか。これは水のようなものでいっぱいであった。しかしその色は火のようであった。
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わたしはそれを受けて飲んだ。飲み終えるとわたしの心は知性を注ぎ出し、わたしの胸は知恵でいっぱいになった。しかもわたしの霊は記憶を保っていた。
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わたしの口は開いて語り、閉じることはなかった。
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いと高きお方は五人の男に知性を与えられた。そこで彼らはそれまで知らなかった文字で、次々とわたしが言ったことを書きしるした。そして四十日間すわっていた。彼らは昼は書き、
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夜はパンを食べた。しかしわたしは昼間に語り、夜も黙らなかった。
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こうして四十日間に九十四巻の本が書かれた。
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四十日間が満ちた時、いと高きお方はわたしに言われた。「あなたが初めに書きしるした二十四巻を公開し、ふさわしい者にもふさわしくない者にも読ませなさい。
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しかし残りの七十巻は、あなたの民の賢者に渡すためにとっておきなさい。
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というのはこれらの本の中には知性の流れと知恵の泉と知識の川があるのだから」。そこでわたしはそのとおりにした。
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