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そして二日目の晩に夢を見た。海から一羽の鷲が昇って来たではないか。その鷲には羽のはえた十二の翼と三つの頭があった。
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鷲は全地の上に翼を広げたではないか。天のすべての風は鷲の上に吹きつけ、雲はそのまわりに集められた。
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わたしは見た。鷲の翼から反対向きの翼が生まれたが、小さい貧弱な翼となった。
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しかしその鷲の頭はじっとしていた。真ん中の頭は他の頭より大きかったが、それも他のと共に動かなかった。
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わたしは見た。鷲はその翼で飛び、地とそこに住む人々を支配したではないか。
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わたしは天下のすべてのものがその鷲に服している様を見た。地上の造られた物は一つとして、だれ一人として、それに逆らうものはなかった。
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わたしは見た。みよ、鷲は爪で立ち上がり、翼に向かって声を発した。
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「みなが同時に見張りをしてはいけない。各自が自分の場所で眠り、決められた時に見張りせよ。
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しかし頭は最後までとっておけ」。
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わたしは見た。その声は頭部からではなく、体の真ん中から発したではないか。
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わたしは反対向きの翼を数えた。みよ、それらは八つあった。
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わたしは見た。右側に一つの翼が起き上がり、全地を支配したではないか。
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その翼は統治したが、終わりが来てなくなり、そのありかは見えなくなった。そして次の翼が起き上がって統治し、その時は長く続いた。
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しかしその翼も支配し終わった時、終わりが来て前の翼のように見えなくなった。
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すると、声が発せられ、その翼に向かって言ったではないか。
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「今まで長く地を支配していた翼よ、聞くがよい。あなたがなくなる前にわたしはこのことを告げる。
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お前の後、だれもあなたほど長い間統治するものはないであろう。半分の長さにも達しないだろう」。
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それから三番目の翼が起き上がり、前の二つのように統治した。しかしその翼も見えなくなった。
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他のすべての翼も同様であった。かわるがわる支配しては消えて行った。
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わたしは見た。ほら、時が来て右手に次の翼が統治するために立ち上がった。そのうちには支配したものもあったが、たちまちなくなった。
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またそれらのうちのあるものは、立ち上がったけれども統治しなかった。
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その後わたしは見た。十二の翼と二つの小さな翼がなくなったではないか。
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そして鷲の体にはじっとしている三つの頭と六つの小さな翼のほか何も残っていなかった。
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わたしは見た。六つの小さな翼から二つが離れ、右側の頭の下にとどまったではないか。しかし四つはもとの場所にとどまっていた。
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わたしは見た。これら四つの下の翼も立ち上がって支配しようと考えたではないか。
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わたしは見た。下の翼のうち一つが立ち上がったが、すぐ見えなくなったではないか。
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そして第二の下の翼も(立ち上がったが)、これは最初のものよりもっと早く見えなくなった。
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わたしは見た。残っていた二つの下の翼も自ら支配しようと心に考えたではないか。
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彼らがこのように考えていた時、じっとしていた頭のうちの一つ、すなわち真ん中の頭が目を覚ましたではないか。これは他の二つの頭より大きかった。
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そしてわたしは、その頭が他の二つの頭を味方に引き込むさまを見た。
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この頭は味方にした頭と一緒に振り向き、王となろうとした二つの下の翼を食い尽くしたではないか。
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この頭は全地を制圧し、そこに住む人々を支配して大いに苦しめた。そしてそれまでのどの翼にも優る力で全地を統治した。
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その後わたしは見た。真ん中の頭がさきほどの翼のように突然なくなってしまったではないか。
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こうして二つの頭が残った。それも同様に、地とその住民を支配した。
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わたしは見た。右側の頭が左側の頭を食い尽くしたではないか。
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その時わたしに語る声を聞いた。「前を見て、見えるもののことを考えなさい」。
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わたしは見た。森からししのようなものが、ほえながら身を起こして出て来た。わたしはそのししが鷲に向かって人の声を発して言うのを聞いたではないか。
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「鷲よ聞け。わたしはあなたに語ろう。いと高きお方はあなたにこう言われる。
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あなたはわたしの世の支配者となり、またわたしの時の終わりをもたらすために、わたしが造った四つの獣の生き残りではないのか。
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あなたは四番目にやって来て、それまでのすべての獣を打ち倒した。大きな恐怖をもってこの世を支配し、全地にきびしい圧政をしき、これだけ長い間偽りをもって世に住んだ。
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あなたは真理をもって世をさばくことをしなかった。
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あなたは柔和な者を苦しめ、平和な者を傷つけた。真実を語る者を憎み、嘘つきを愛して、実を結ぶ者の住み家を破壊し、あなたに害を加えなかった人の城壁を低くした。
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そしてあなたの無礼はいと高きお方のもとに、あなたの高慢は力ある方のところまで達した。
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いと高きお方は自らの時を見わたした。すると、時は終わり、時代は完了したではないか。
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それゆえに鷲よ、すみやかに消え失せよ。あなたの恐ろしい翼も極悪の小さな翼も、悪意にあふれた頭も邪悪な爪も、虚しい全身もすべてだ。
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それは全地があなたの暴力から解き放たれて生気を取り戻し、地を造られた方のさばきと慈しみを待ち望むためである」。
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